あなたは平凡な男子校生。(3)-4
「あら、意外と慎重派なのね。感心感心。それでこそ、可愛い妹のおっぱいを任せられるってものだわ」
けむに捲くような白香の言い方が気に障ったが、そんなことでいちいち言い返しても始まらない。一時の感情より、情報を正しく知ることのほうが重要だ。だから、あなたは黙ったまま、言ってくれよ、と顔で白香を促した。
「行程どおりうまく進めば、集中調教期間が三週間、その後の
集中‥‥。そしてランディング‥‥。いくつかの独自の用語は、彼女、蒲生白香のなかですでに、プランができていることを示していた。そして彼女は大きな手帳をめくり、その、うまく進んだ場合の日付を、示してくれた。そして、あなたがいちばん気になっていたことを言ってくれた。
「その後では、あなたと紅香がつきあおうが何しようが、わたしは関知しないわ。――ま、姉として、言うべきことは言わせてもらいますけどw」
それから彼女は、少し間を置いて、こう付け加えた。
「ただ別にわたしは、悪いけど、応援もしないから。紅香の気持ち次第、あなたの努力次第ってことね。わたし忙しいし。やることいっぱいあるし」
言ってから蒲生白香は、言わなければよかった、という表情を見せた。そこにあなたは、きっちりしたこの大人びた少女の、隙のようなものを垣間見たように思った。が、この発言のどこがなぜ隙になるのかは、皆目わからなかった。彼女は、また髪を払った――やや落ち着かなさげに。
「どう? この話はなかったことにして――全部、なかったことにして‥‥わたしはこれで、消えてもいいのよ。それは一向にかまわない‥‥。即答しなくてもいいから、自分でよく考えて決めて‥‥ね、海田くん」
にりにり、にりにり、にりにりにり‥‥。
にりにり、にりにり、にりにりにり‥‥。
‥‥‥‥。
とにかく、このうららかな春の日、あなたはスマホの番号等を交換して、蒲生白香と別れたのだった。彼女は、行くところがあるからと、手をひらひらさせて去っていった。が、振られる手よりもヒップに気を取られていたこのときのあなたは、ここから夏に向けて、巨乳女子校生姉妹たちの騒擾に巻き込まれてゆくとは、思っていなかった。