あなたは平凡な男子校生。(1)-2
ホームは狭く、あなたと彼女がいる場所は、エスカレーターに向かう乗客、そこから降りてくる乗客が行きかっていた。おまけに、すぐ近くに設置されていたスピーカーからアナウンスが大ボリュームで聞こえてきていた。どうやら、通過電車があるらしい。
突然話があると言われたあなたは戸惑ったが、
(別に用事もないし‥‥)
と、安易に少女の話に乗った。正統派の美少女が好みなあなたには、こういう、ちょっと斜にかまえた感じのコは近寄り難かったが、それでも、彼女は十分に魅力的だったからだ。
巨乳というよりは、爆乳、というべきなのかもしれない。ついて歩くと、
彼女を見るのは初めてだが、ブレザー、スクールシャツに細いエンジ色のタイ、グレー系のチェックのスカートの清蘭学院の制服は、あなたにはお馴染みであったし、巨乳・爆乳好きのあなたとしては、その光景はたまらなかった。
改札を出ると、あなたたちの背後を通過電車が音を立てて通り過ぎた。
「わたしは、白香っていうの。蒲生白香。よろしくね、海田くん」
この改札は、この駅の複数ある改札のひとつで、出入りが少ない、小さな改札だ。メインの改札口はもっと大きく、さきほどのエスカレーターの乗客はそこを使う。別の線への乗り換え口も、そのメイン改札と同じフロアにある。あなたも、本来なら、そこへ向かうはずだった。
「はあ‥‥」
あなたがうなずくと、巨乳美少女は色っぽく眉根を寄せて、
「あれえ‥‥?」
と、近すぎるくらいの距離であなたの顔を覗き込み、あなたをどぎまぎさせた。あなたの好みではないものの、十分な、いや十二分な色気だった。あなたは顔を離して、聞き返した。
「な、な、なんだよ‥‥ですか‥‥?」
「『蒲生』‥‥で、わからないんだ? てっきり、名字くらい調べてるのかと思った」
「名字‥‥? なんのことですか?」
あなたは聞き直した。が、この時点ではまだ漠然としていたが――予感が、あった。
駅舎から一歩踏み出すと、目の前には、乗り換え駅の規模からすると意外なほどの、のどかな景色が広がっていた。