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よだかの星に微笑みを(第三部)
【SF 官能小説】

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優しさと情けなさと-2

「何日も休んですみません。」
バイトに来たのは久しぶりだった。幸い、飲み代はこのところ俺の分を蘭が出してくれていて、生活費が足りていたから、バイト無しでもどうにかなっていた。ヒモ生活が始まっていたわけだ。
「ビーガンって、自然食が広まるついでに増えているみたいだな。なかなか繁盛してるぞ。外国人もよく来る。」
「奥さんとはどうなんですか。」
「子供ができた。もう妊娠二ヶ月目だ。俺も菜食になっちゃったよ。」
「おめでとうございます。俺、肉食うんですけど、従業員がそれでいいんですかね。」
「世の中には、下戸の酒造業者もいる。気にするな。主義より付き合いが大事だよ。」
「そんなもんですかね。」
ただ生きていくだけなら、一人では生きていけないから、付き合いが大事だけれども、個人として立つとか、人間らしく生きるとなると、主義の方が大切な気もする。
ところが人は主義に徹底できない。
「ウイルスとか、ミドリムシあたりだと、生物かとか動物かとか、ビーガンはどう考えるんでしょう。」
「ははは! 俺は知らん。」
支配人は主義者ではなかった。
「いらっしゃいませ!」
「こんにちは!」
「ん?」
「ああ、常連さんだ。」
高校生が来たと思ったら、岡田妹だった。髪は黒く、普通の制服を着ている。分からないほど変わっていた。しかも常連さんとは驚いた。
「通信制に行ったとか聞いたけど。」
「あ、恥ずかしい。今日はスクーリングの日で、制服も一応あるから、着てるんですよ。」
「土曜日なのに? あ、看護師目指すって?」
「はい。人も動物も看護できるよう、頑張ります。」
「志って、すごいもんだな。人が変わるからな。」
「あたし、自分も生きる生き方、しようと思ってます。ランチお願いします。」
俺は自分が随分恥ずかしくなった。あの岡田妹にやられたと思った。自分が生きる、自分を生かすとは、どういう事なんだろう。何かしないでは、生かすも殺すもない。確かに俺は何もしていない。


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