HELLO AGAIN-1
あの時、君の涙に気が付けなかったように。
僕は愚かだった。
あの雨の日。
雨が嫌いだ。
今日は朝から雨が降り続いている。
忘れられない別れの日の雨。
雨と記憶の糸を辿る。
不思議と冷たくはなかった。
ただ、痛かった。
重かった。
髪は濡れ雫が落ちた。
服は水気を帯び、
重かった。
それは君への思い?
それとも僕の未練?
君を悲しませないように
泣かないことを心に誓ったまま糸は途切れた。
音もなく
意味もなく切れた糸。
君へとの繋がりを失った先端は何に絡み付く。
時は過ぎて
時が癒して
忘却の果てまで連れていった。
痛むのは嘘。
悲劇を演出しているのは
紛れもない僕。
痛まなくなった心に気が付かないでいた僕自身。
目をこすりうつむいて歩く。
音も景色も入ってこない。
雨はやがてあがっていた。
記憶の中でずっと二人は生きて行ける。
君の涙、あの時気付けなかった。
僕は愚かだった。