投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

梨花
【その他 官能小説】

梨花の最初へ 梨花 14 梨花 16 梨花の最後へ

梨花-15

 「おしっこしただろ?」
 「してないよ」
 「凄い量の汗だぞ、それなら」
 「うん、もう、息苦しくて死にそうだった」
 「またか」
 「違う違う、窒息死するかと思った」
 「ああ、皮膚呼吸出来なかったからだな」
 「うん苦しかった。でも凄く感じた。凄く良かった」
 「感じた上にダイエットまで出来て良かったな」
 「うん、これから毎日しよう」
 「馬鹿、それじゃ俺が死ぬよ」


 今日はオサムの母の20回忌を行うという日である。父は母より10年近く前に死んでいるが、それも合わせて法要し、2人の法事はこれで終わりということにするから是非出てくれと数日前に長兄の嫁さんから電話があった。誰も親戚は呼ばずに内輪も内輪、兄弟夫婦だけでやるからと言う。オサムは梨花と正式に結婚している訳では無いので1人で行くつもりでいたのだが、

 「なんか凄い美人と一緒に暮らしているっていうじゃない? その人連れて一緒にいらっしゃい。お墓まいりしてその後小さい料亭だけど皆で会食しようということにしているの。1人1万円で。錦糸町も荻窪も揃って来るということだからその人連れて2人でいらっしゃい」
 「いや俺達結婚している訳じゃないから」
 「そんなこといいのよ。一緒に暮らしてんでしょ?」
 「そうだけど」
 「それじゃ結婚してんのと同じよ。構わないから連れていらっしゃい。私も是非お会いしたいわ。隠してないでみんなに見せて頂戴」
 「見世物みたいだな」
 「みんなに紹介しなさいと言ってるの」

 オサムは兄弟とは疎遠で社会人になってからは殆ど付き合っていない。荻窪というのは次兄夫婦、錦糸町というのは姉夫婦のことだが、行き来は全く無い。ただ、2年くらい前に銀座に用があった時、出勤する梨花と一緒に出かけたことがあり、その時たまたま次兄に出会った。

 「今こいつと暮らしてる」
 「あ、荻窪のお兄さんですね。お話はいつも聞いています。やっぱり良く似ていらっしゃるんですね」
 「こいつと一緒に暮らすなんて随分物好きな方ですね。そのうちお店の方に寄せて貰うことがあるかも知れません」
 というような立ち話を交わしたので、オサムが梨花と一緒に暮らしていることは伝わっていたのである。2人とも結婚について特に話し合ったことがある訳ではなく、なんとなく一緒になって3年以上経ってしまった。子供でも出来れば結婚ということが話題にのぼることになるのだろうが、2人は相性でも悪いのか避妊もしていないのに不思議に子供が出来ない。
 
 「今までも法事ってしていたの?」
 「いや知らない。俺は勝手に行きたい時に1人で墓参りしているし、向こうは向こうで勝手にやってたんじゃないか?」
 「勝手にっていうことは無いでしょ。今回だって知らせて来たじゃないの」
 「いや、昔1回なんか電話があったけど『俺は行かない』って言ったらそれから電話は来なくなった」
 「どうしてそんなに兄弟仲が悪いの? 何かあったの?」
 「別に仲が悪いとは思ってないよ。仲良しだとも思わないけど。特に理由も無いから付き合ってないだけで」
 「兄弟だってのは付き合う特別の理由じゃないの」
 「そうか? まあいろいろ考え方はあるわな」
 「偏屈なんだから。で、どうするの? 行くの?」
 「あぁ、中野の姉さんに誘われたらしょうがない」

 実はオサムはやはり2人の兄達とは余り仲が良くないのである。オサムは学生時代に中野の長兄夫婦の家に居候としてやっかいになっていた時期がある。と言うよりも両親が早くに死んでいるのだから長兄が親代わりになっていたのである。独立する前の子供が親の家に住んでいるのは当然のことだから、親が死んだら親代わりとなった長兄と引き続き同居する形になるのもまた当然である。しかしオサムは長兄を親代わりとは認めていなかったし、自分の気分としては余儀なく居候させて貰っていると考えていた。昨日までただの兄貴だった者が親が死んだからといって急に俺の親になってたまるかと思っていた。しかしオサムはその頃長兄の嫁さんには金銭的な面も含めて何かと世話になり、彼女にだけはちょっと頭が上がらない思いがある。この姉さんというのが何しろ人の世話をすることが好きな女で、その上何処を取っても悪意のかけらも感じられない愚直な性格である。あの馬鹿野郎の兄貴にどうしてこんな人が付くんだろうと不思議に思えて仕方なかった。


梨花の最初へ 梨花 14 梨花 16 梨花の最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前