お姉さまのミリタリー講座〜はじめての拳銃編〜-2
「まず一つ…銃口は人には向けない。これを常に守れば大きな事故は殆んど起きないわ。」
何処からかメモを取り出した由衣が真剣にメモをしている。
「二つ目、撃ち終わったら薬室に弾が無い事を確認、そしてセーフティロックをかける…これも事故を防止する為ね。」
メモに書き終えるのを確認してから最後の忠告をする。
「三つ目、これは忠告と言うより考え方なんだけど…。」
私は腰のホルスターからルガーを取り出して由衣に見せるように前のテーブルに置いた。
一呼吸置いて三つ目の忠告を由衣に言う。
「銃は人殺しの道具では無いわ…それを良く頭に入れて撃ってね。」
言い終わるとルガーを手に取りもう一度元のホルスターにしまう。
銃というものは人間同士の争いによって生まれた負の遺産…でも、それは人の扱い方によるものだと私は由衣に伝えたかったのである。
「お姉さま…。」
最後の言葉に何かを感じたのか、潤んだ瞳で私の事を見つめる…きっと、私の気持ちは伝わっただろう。
私は由衣を抱き寄せ、しばらく動かなかった。
「それじゃあ、撃ってみましょう。」
落ち着いた後、私はそう言って懐から一丁の小さな銃を取り出した。
グリップにはベレッタのマークが刻まれている…M21Aである。
「小っちゃい…。」
感嘆の声をあげる由衣を見て少し私の悪戯心が顔を出した。
もう一度私は懐から銃を取り出す事にする。茶色のグリップに跳ね馬のマークの銃…属に言うガバメントを手にとって由衣に手渡した。
「それを撃つ前にちょっとこれを撃ってみて。」
そう私が言うと由衣は急に泣きそうな顔をする…華奢な由衣にはガバメントをマトモに扱うのはまず無理だろう。
「そんな…私にこんな大きな銃なんて…。」
「もうマガジンに弾は入っているから、早くスライドを引いて撃ちなさい。」
有無を言わせぬ口調で巻くしたてる。由衣は仕方ないといった感じでスライドを引こうとするが…。
「お姉さま…。」
少し時間が経って、スライドが引けないのか助けを求めるように私の事を見る。
そろそろ可哀想になってきたため悪戯は止める事にした。
「やっぱり…彼方にはスライドを引くのは無理のようね。」
私がそう言って由衣の手からガバメントを取ると急に由衣が泣き出す。
「ひっぐ……ごめんなさい…お姉さま…駄目な私で…。」
まさか泣かれるとは思っていなかった私は焦ってしまう。とりあえずフォローしておかないと…。
「ご…ごめんなさい、別に引けなくても良いのよ?ちょっとM21Aの有り難みを分かりやすくしたかっただけで…。」
座り込んだ由衣に合わせるようにしゃがみ、ハンカチで涙を拭う。
「それに、わざとスライドが硬い銃を渡したんだから引けなくて当たり前。…私だって苦労するんだから。」
「ぐす…酷いです…お姉さま…。」
「ごめんね…ケーキあげるから、元気出して。」
少し離れた所に有る冷蔵庫からショートケーキを取り出してフォークで一口分差し出す。
「あむ……おいしい…。」
甘い物には目がない由衣は誘われるようにフォークに刺さったケーキを口に含む。
いつのまにか涙は収まり笑顔が戻ってきた。