プロローグ-6
…10years later
「…銀は、今年でいくつだ?」
煙草をふかした男が、近くにいた部下らしき男に問いかける。
「はっ。今年で、16になりますね。」
「そうか。あれから、10年たつのか。」
男はおもむろに窓の外に目をやった。
「あのガキが、でっかくなるわけだな。」
***
藤堂豊は、見事な桜が咲き誇る一本道を息を切らして走っていた。
真新しい紺のブレザーを身に纏い、これから始まる学校生活に夢を馳せつつも、入学式に遅れそうだという不安に苛まれていた。
「やっぱり母さんの言うとおり車にすれば良かったッ…ハァ…。」
足ももう疲労が溜まってもつれそうだ。
「ハァ…ん?」
ふと目に入ってきた自分と同じブレザー。
そして、銀色に輝く髪。
「…誰だ…?」
綺麗な銀髪に、豊は目を奪われた。
えりあしは三つ編みに結われ、風にまかせてゆらゆらと揺れている。
銀、16歳。
復讐の幕は、切って落とされた。