プロローグ-5
***
車の音がどんどん遠ざかっていく。
「…ッハァッ、ハァ…ハァ…」
ジュリアの瞳が涙で滲む。
大きなお腹が、段々と痛みだしてきた。
「…ハァ…、…ッユウ…、ハァ、…ギンッ…!」
痛みを増していくお腹を抱え、ぐっとお腹に力を入れた。
「ッ…ハァ…ハァッ…」
力を入れるたびに、肩と足の撃たれた傷から夥しい量の血液が溢れた。
「ハァ…お願い…、この子だけでもッ…助けて…!」
ギュッと両目を堅く閉じ、渾身の力を込める。
…ギャー、オギャーオギャー…
元気の良い産声があがった。
しかし、このままなら産まれたばかりのこの子は助からない。
「誰か……」
「おい!間違いねぇ!何か起こってるぞ!」
ざわめいた声と、こちらに向かってくる無数の足音。
「さっき銃の音がしたんだ!今度は赤ん坊だぞ?!」
その声を聞いて、力無い微笑みを浮かべるジュリア。
ジュリアにはもう、目を開けていることすらままならない。
瞼が下りる刹那、自分の愛した男の姿を霞んだ瞳に映した。
「…ユウ…、…今、行く…ゎ……。」