プロローグ-4
━ギン。
「それ…」
「お前の名前だ。いつまでも坊主じゃいられないからな。由来は、…俺の故郷での、お前の髪の色の名だ。ちょっと単純だけどな。」
━僕の、名前。
「ありがとっ…、…パパッ!」
少年、もといギンの目から大粒の涙が流れる。
それから、ギン達はとても幸せだった。
幸せだった━。
ガウンッ…
静かな部屋に響く無機質な音。
「…あの男の息子が、まさかこんな所で生きていたなんてな。」
ギンの耳には聞き慣れない言葉を話す男が三人。
そして、手には拳銃。
「…パパ…?」
白い壁に飛び散った赤の色。
ユウは、あの無機質な音と同時に壁にもたれ掛かったまま座り込み、ピクリとも動かない。
その五メートル程先には、赤い水たまりの上で、大きなお腹をかばいながら倒れてから、同じくピクリとも動かないジュリア。
「パパ…?どうしたの…?」
無意識に手が震える。
青の制服にも滲んでいる赤い液体が、ユウのこめかみから止めどなく流れている。
震えた手で、ギンはユウの頬に触れた。
白い手が赤に染まる。
ギンの血の気が一気にひいていくのが自分でもわかった。
「なんだ、このガキ。」
一人の男が、ぐいとギンの腕を引く。
「…へぇ、綺麗な顔してるじゃねぇか。おい、名は何だ。」
ギンの灰緑の瞳に男が映る。
━こいつが…
「…何も言わねぇなぁ。…そうか、言葉が違うのか。」
━こいつらが…
「あー…、What your name?」
「……Gin。」
━パパ達を…殺した!!
「…I don't forgive by any means…!」
ギンがぼそっと呟いた。
男達にギンの声は聞こえない。
「よし!ガキは連れていく。引き上げるぞ。」