プロローグ-2
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白と水色のタイルが交互に並んでいる、水蒸気で湿った壁。
シャワーの音も、泡の擦れる音も反響して、何もかもが大きく聞こえる。
「全く。ジュリアの妄想癖はいつになったら治るんだ…。」
少年の頭を洗いながら、二回目のため息を吐きながらユウが呟く。
「それにしても珍しいな、銀髪ってのは。生まれて初めて見た。白髪なら沢山見たが…。…まぁここいらじゃ黒髪黒目もあんまりいないがな。」
ははっと短く笑いながら、左サイドについている蛇口をくるっと捻る。
少年の頭の真上で待機していたシャワー口から、一気に大量の湯が少年に降り注ぐ。
見る見るうちに泡は流れ落ち、銀色をした髪の毛が姿を現す。
「…━っし!そろそろあがるか。腹も減ってきただろ?俺ももう減りすぎて感覚ないくらいだし。」
ギィっと風呂場のドアを開ける。すると、ジュリアが白いバスタオルを横一杯に広げ、満面の笑顔で待ちかまえていた。
「…俺…を待ってたのか?」
「そんなわけないでしょッ!」
「…ですよね。」
ジュリアの優しい笑顔が少年に向けられる。
少年を催促するように何度も頷くジュリアを見て、ゆっくりとジュリアに近づいていく少年。
「お風呂、気持ちよかった?雨で濡れて寒かったでしょう。」
少年の頭から始まり、全身の水滴を余すことなく拭き取る。
「服、ボロボロだったから新しいのを用意したわ。と言っても、私のお古の服だけど…。」
白い無地のTシャツとデニムの半ズボンが用意されてある。それと、大きめのトランクス。
「…やっぱりユウのトランクスじゃちょっと大きすぎたわね…。」
ぶかぶかのトランクスをはく少年を、ジュリアが含み笑いを交えて見つめている。
「でも、まっ、今日だけだし大丈夫よねっ!さっ!髪乾かしてあげる。」
ささっと少年に服を着せると、手元にあったドライヤーのスイッチを入れる。
独特の機械音と共に、温かい熱風が少年の後頭部辺りで行き来する。
濡れて固まりを作っていた髪の水分がとれ、本来の姿へと戻っていく。
「や〜ん!ふっわふわ〜!すっごい気持ちいい〜!」
少年の乾いた猫っ毛の髪の手触りの良さに、ジュリアはたまらず頬を擦り寄せた。
「こらっ、坊主が困ってるだろ!」
「だって、もうふわふわのさらさらで…」
少年が初めて顔を上げた。
灰緑色の瞳が、ジュリアの青い瞳をじっと見つめる。