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祭りの日の儀式
【若奥さん 官能小説】

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栗原家の場合-1

 残るは、栗原家のみとなった。
 ここにいる誰しもが、こうなることとは微塵も思っていなかった。
 大信の、まさかのカミングアウト。しかも、知られたくない夫婦のいやらしい秘密。それは、推測するに、恥辱的な行為であることに違いない。
 当人(妻・百合子)をわざわざ呼び出し、皆の前で、その性癖を披露するという姿を見れば、自ずと導き出せる。

 呼び出され、微動だにすることもせず、じっと一点を見つめ、その瞬間が来るのを待つ百合子。
 悟の家の、アナルプレイ。
 透の家の、ピスプレイ。
 臣吾の家の、スニッフィングプレイ。
 それぞれの性的嗜好を披露され、都度、百合子の性心は刺激されていた。
 清楚で真面目な百合子は、それを悟られないように、必死に耐えているであろうことは、容易に感付くことが出来た。
 鉄面皮のような表情を、崩そうとしなかった百合子だが、各家のプレイを聞くたびに、その内側は、もう溢れんばかりの淫欲に支配されたいた。

「じゃあ、うちの話をさせてもらうよ」
 大信は、参加メンバーに向かって声を発したのだが、それは、百合子に向けたスタートの合図だったのではないだろうか。
 百合子は、すぅっと息を吸い、観念したかのように目を閉じた。
「俺は、昔から、真面目の堅物と言われてきた。それは自分でも良く分かっている。傍から見れば、実直な銀行員に見えるかもしれない。けど、その実、真面目な裏側は、どこにでもいるスケベな人間。いや、人一倍ドスケベな人間だったんだ」
 大信は、これまでの30数年間に渡る真面目人間のレッテルを、自ら引き剥がした。
「百合子も同じ。真面目で、お堅いお嬢様と言われているけど、桁外れのドスケベ女なんだよ」
 百合子の顔が、これまでに無いくらい歪み、歯を食い縛っているかのような表情に変わった。
 一同は、ゴクリと唾を飲み込んだ。
 百合子の公開恥辱が始まった。

「俺たち夫婦は、ドが付くほどのスケベで、変態な夫婦なんだ。SEXが大好きで、ほぼ毎日、お互いのカラダを貪り合っています」
 ゆっくりと目を開けた百合子は、覚悟を決めたかのように穏やかな表情を見せた。
「特に、恥辱プレイは、互いの興奮点のマックスが何処にあるのかを探りきれないくらいに、深く長く追い求めている。常に、どうすれば、どんなことをすれば、素晴らしい快楽を得られるかってことばっかり考えている」
 この場にいた面々が抱いていた大信の印象。それは、本人も言う通り、クソがつくほどの真面目。人付き合いも良い方ではないし、どちらかと言えば、声を掛けづらいタイプであった。
 その他大勢に含まれるこの夫婦が、このまま、何事もなく、この街で生活していくことは造作もなかったはずだ。それが、何故わざわざカミングアウトをすることを選択したのか。
 ここにいるメンバーが、皆が皆、口が堅いわけではない。
 どこでどう漏れるかわからない。そんなリスクを背負っているのも、わかっていてのことだろう。
 ただ、これまでの言動を聞いていると、むしろ、自分たちのことを、町の全員がスケベな人間であると認知してもらい、すれ違うたびに、蔑んだ目で見られることが快楽となる。それを望んでいるのではないか。それならば、大信の言う通り、変態だ。

「きっかけは・・・・・・」
 大信は、どのようにして、恥辱プレーに目覚めたかを語り始めようとした。
「ねぇ、本当にいいの?」
 少し空いた間を埋めるように、奈々子が口を挟んだ。
「私たちには、口があるんだよ。何処で、誰かに教えちゃうかもしれないんだよ。町のみんなに、バレちゃうことだってあるんだよ。人は、皆噂好きだし、そうなったら好奇の目で見られるんだよ」
 奈々子は、誰しもが思っていたことを口にした。
「それは・・・・・・」
 やや口籠った大信。
「かまいません」
 それまで無言を通していた百合子が、張りのある声で言った。
「もし、バレたならば、それはそれでかまいません。むしろ、私の心のどこかでは、それを望んでいるのかもしれません」
 カミングアウトを続ける栗原夫婦。
 少しづつ自分たちの性癖を語りだしたが、表情はまだこわばったままだ。
「恥ずかしながら、私は他人から蔑んだ目で見られることで、性的興奮を覚えてしまうのです。それと・・・・・・私の恥ずかしい部分を晒されることに、異様に興奮してしまいます。そういう性癖なんです」
 真面目で、実直な百合子らしい自己分析だった。
 それを晒すことも、興奮を助長させるものなのだろう。つまり、この時点で、彼女は恥辱プレーに入り込んでいるのだ。
「ここにいるのは、全員が私のことを知っている人たちです。知らない人ならまだしも、知っている人が私のいやらしい部分を好奇の目で見ている。そんな状況が、私にとっては、この上ない快感なんです。蔑んで欲しいんです」
 異様な雰囲気が、この場を支配した。
 あの奈々子でさえ、硬い表情で、口をキュッと結び、言葉が続かない。
 同種の性的嗜好を持つ愛好の場ならば、間髪入れずに、卑猥な言葉や罵声が浴びせかけられていたに違いない。
 だが、ここは幼馴染たちの集まりだ。目的が、性的カミングアウトを主とした会だとはいっても、そこまで踏み込んでいいものなのか、それぞれが戸惑っている。

「いきなり、そんなこと言われても、みんな困っちゃうよぉ」
 苦笑いで、奈々子が口を開いた。
「わかるよ。うん。わかる。ここで、知った顔の私たちが、いやらしい言葉を投げかければ、いつも以上に興奮しちゃうんでしょ」
 奈々子は、百合子に問い掛けた。
 百合子は、無言で頷く。
「でもさ、俺たちも、今初めて、何て言うか、そのぉ百合子さんの性癖っていうの!?それを聞いたばっかだからさ、正直、戸惑っちゃってるんだよね」
 みんなの心内を見透かしたかのように、悟が言った。
 他の面子も、うんうんと頷く。


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