『茜色の空に、side:秦一』-7
「・・はぁぁっ・・!」
奥迄何とか届くと、明香さんは甘いため息を漏す。痛くはなさそうな様子に安心する。
しかし僕は、余裕は無く、それだけで射精してしまいそうだった。
「明香・・、愛してる・・・。」
こんな状態でさん付けも可笑しいよな、と頭の片隅で何故か冷静に思い、愛しい人の名前を囁く。
「・・私も・・。」
切なそうに眉間に軽く皺を寄せて答える明香さんに、僕は理性が飛んでしまったかの様に腰を打ち付ける。
「・・も・・駄目っ・・!しん・・いち・・っ!」
明香さんの中がひときわきつく、僕のモノを締め付ける。
同時に僕は明香さんの中に精を放った。
僕にしがみついていた両腕がだらりと垂れ、明香さんの体が弛緩する。
僕は明香さんから自身を抜き取ると、そのまま明香さんの隣に横になった。
「しん・・いち・・・。」
明香さんは横たわる僕の方に体を向け、キュッと僕の体を抱き締めて、・・・そのまま寝てしまった。
僕は思わず苦笑し、色白の顔にかかった柔らかにウエーブした髪をそっとかきあげ、その安らかな寝顔に口づけをする。
愛してる。小さく呟き、僕もそのまま眠りに落ちた──。
それから暫くして目が覚めると、先に起きていた明香さんに又欲情してしまって愛し合った。一晩に2回なんて自分でも驚きだ。盛りのついた高校生みたいだ、と、自分でも呆れる。
ホテルを出たのはチェックアウトの時間ギリギリの10時。
明香さんの泊まる予定だったホテルにも二人で急いで戻り、チェックアウトする。
二人共特に予定を入れてなかったので、折角だしデートらしい事をしよう、と言う事になった。
ほんの半年前迄、僕はこの街に住んでいたが、今日見る景色はいつもと全く違って見えた。
きっと隣に明香さんが居るからだろう。
単純だな、と思いながらも、そっと明香さんの左手を繋ぐ。
明香さんはふわり、とこちらを見上げて、そして嬉しそうに微笑み、握られた左手に少し力を込めた。
そんな些細な事に幸せを感じながら、二人で新しく出来たデパートに入ったり、ご飯を食べたりして、あっという間に時が過ぎて行った。
そろそろ帰らないと明日の仕事に差し支える、と言う事で、駅に向かう事になったのはもう陽も沈もうとする夕刻。
本当はもう一晩、いや、もう少しで良いから一緒に居たかったが、明香さんはそうゆう線引きははっきりした人だ。そう口にした所で、軽くあしらわれてしまうだろう。
「きれーい。」
途中の公園で、明香さんが眩しそうに夕陽を見つめて呟く。
明香さんのほうが綺麗だよ。なんてクサいセリフは胸に閉まって、僕も夕陽を仰ぐ。
真っ赤に燃えて揺らめく大きな夕陽は、でも本当に綺麗だった。