結婚式-2
優子の親族を始め、詳細を知らない者達は、初めは怪訝そうにしていたが、場の和やかな雰囲気に呑まれて、というよりも、場の特殊なオーラに包まれて次第に怪訝な気持ちも消えていったのだ。
悠子の秘密を知る者達には、積極的に悠子としてウェディングドレス姿を見せるようにした。
星司を始め、列席する複数の能力者の力を中継することで、伝承に値するヒーラーと幽体のコンビにかかれば、列席者を選り分けて、優子の姿を悠子に見せるくらいは朝飯前だった。
残念ながら、視神経に働きかけているだけなので、悠子の像として写真に残せないが、その分、個々の記憶に印象付けるために、優子は積極的に力を使っていた。
「悠子さん、綺麗」と、悠子の美しさを讃える声も多かったが、幸いにして音が同じ【ゆうこ】なので、秘密を知らない者達が聞いても問題はなかった。
「うううっ、悠子さん…、おおおおん」
ただ、月司を始め、陽司と真理子が陽子よりも悠子の花嫁姿を前に、異常なほど号泣していたのはかなり目立っていた。
死後ではあったが、各務家の面々にずっと気に掛けて貰っていたことを痛感し、悠子も涙を流した。
「宮本さん、ご苦労様でした」
一仕事を終えた宮本が歓談中の合間に席に戻ると、由香里が声をかけてきた。
「由香里先生、凄く綺麗だ…」
トレードマークの眼鏡は今日はかけていない。髪をアップにまとめた由香里の艶やかな青いドレス姿に、宮本は眩しそうに目を細めた。
「あら、そんな見え透いたお世辞言っても何も出ないですよ」
由香里は恥ずかしそうにはにかんだ。
「いやいや、花嫁達より綺麗かも」
「またまたぁ。でも嬉しいな。普段は地味な格好してるから、張り切った甲斐があったみたいですね」
普段の由香里は、女教師らしく地味な姿をしていた。といっても【痴漢専用車両】の時はスカートを短くして意気込みを見せた。
「いえいえ、いつもの清潔感が溢れる姿も素敵ですよ」
「ホントですかあ。あっ…、ダメ…」
喜んだ由香里だったが、何故か眉ねに皺を寄せた。
「どうしました?」
心配した宮本が声をかけた。由香里はそんな宮本に顔を近づけると、耳元を擽るように囁いた。
「宮本さんが熱く見るから、濡れてきちゃった…」
「えっ…」
宮本の脳裏に、凛とした姿で吊革を持ちながら、これから始まる期待感で太ももに愛液を伝わす由香里のお馴染みの姿が浮かんだ。
「ゆ、由香里先生下着は?」
由香里の嗜好を知る宮本の声が大きくなった。周囲の視線をほんの少し気にしながら、由香里は妖しい笑みを浮かべて人差し指を唇に当てた。
「ナ・イ・ショ…」
そう返されると益々意識するものだ。ドレスの中の様子を想像した宮本のモノは見る見る内に大きくなってきた。
「やあん、宮本さんたら」
常に男の下半身の状態を窺っている由香里には、宮本の状態が手に取るようにわかった。というよりもそうなるように仕向けていた。
「ちょうどいいいわ。宮本さん、後で一緒に来てくれません?」
「えっ?どこに?オレまだ出番が…」
場内が歓談中に出番はないが、お色直しの退席のアナウンスと、その後の再登場には進行役としてマイクを持たないといけなかった。
「大丈夫ですよ。そのお色直しに呼ばれてるから、その用事が済めば花嫁より先に戻れますよ」
「どういうこと?」
「あっ、ほら、そろそろお色直しの時間ですよ。司会、頑張ってくださいね」
由香里は詳細を告げずに、楽しげに微笑んで宮本を追いやった。