秘めた極楽-4
4.
中々子供に恵まれず、妊娠をしても直ぐに流産をしてしまう。漸く大事に大事を重ねて長女を得たが、しばらくして子宮筋腫が見つかり、卵巣を含む全摘出の手術を受けた。
元々セックスには消極的だった妻を悦ばせようと、専門書から女性週刊誌まで色々と研究をしてみたが、思うような成果は得られなかった。今風に言えば、DNAが性生活に向いていない様であった。その上に、子宮全摘出の手術を受けて、益々夫婦の性生活は砂漠化して行った。
博史の趣味のダンスも、初めは夫婦一緒に練習をしていたが、妻は直ぐに興味を失って、止めてしまった。
夫婦同士が友人だった由貴、紀夫夫妻は、夫の紀夫がダンスに全く関心がなく、必然的に博史と由貴がパートナーとして踊る機会が増えていった。
夫とのセックスを煩わしく思う妻との睦みごとは日ごとに疎遠になり、博史の欲求不満は日常的で、由貴とダンスを踊っていても勃起をする肉棒の始末に困るのだった。
9月11日は、由貴の誕生日だ。
由貴の生活もどうやら落ち着いた様なので、博史は誕生祝いのディナーに誘った。 離婚をして独りになった由貴を誘うのに、躊躇う必要はない。
女性が貰って悦ぶといわれる、赤いバラの花束を用意した。
渋谷のスペイン料理店で、向かい合わせに座った由貴は前と少しも変わった様子を見せなかった。夫を残して3ヶ月も海外に行ってしまう由貴は、元来独立心が強く、生活力の強い女だ。そんな気風が、博史は好きだった。
フラメンコのショウが済んで、店の賑わいも落ち着く頃にはワインの酔いも手伝って、由貴がボツボツと離婚の経緯をしゃべりだした。
「バイアグラだなんて、笑っちゃうわよね、女が出来て、その女に操を立てて、女房とセックスしないなんて、本末転倒でしょう?そりゃ海外の仕事で、男と女が毎日近くで寝泊りしてれば、結構誘惑もあったわよ。でも私は、不倫はしなかったわ。こんなんなら、一度寝てみたい人が居なかったわけでもないのにね、損しちゃった」
由貴がわざとおどけた話をするのを聞いて、博史は胸が熱くなった。
「又、ダンスで会うから、何か俺に出来ることがあったら遠慮なく相談してくれよ」
「うん、ありがとう、博史さんからお花を貰うなんて嬉しいわ、ありがとうね」