越えたい!!-1
「久しぶり。髪金だぞ?」懐かしい声がする。その声に私の心臓が跳ねた。
私、光希あだ名はミッキー20歳。告白できない女。
思い起こせば中学時代…私には好きな人がいた。同じクラスのムードメーカー的存在の功太。
いつも二人で馬鹿やって笑ってた。顔はイマイチだけどなぜだか惹かれた。
普段は馬鹿だけど陸上部で走っているヤツはかなりかっこよかった。
功太の一番近い女子だって自覚はあった。
告白は…しようと思わなかった。
出来なかったのだ。
今の関係が壊れたら、もしうまくいったとして付き合ってから嫌なとこが出てきたら…考えが尽きないのだ。親友のななに相談しても無駄だった。
ななは大分はっきりした性格で好きは好き、嫌いは嫌い。それが原因で色々問題は起こすけど…羨ましかった。
私はいつも皆と仲良くしようと誰にでもイイ顔をしてしまうところがあった。
私もはっきり功太に好きだって言いたかった。
でも出来なかった。そうこうしていたら功太に彼女が出来た。そして駄目押し。
「お前イイやつだよな。俺ら親友だ。」
そんな懐かしい思い出が蘇っていたが、フッと我に返ると、今があった。
高校卒業以来会っていなかった仲間と久しぶりに再会し飲むことになったのだ。
私、親友なな、智也、そして高校時代好きだった正樹。4人は放課後いつも教室に残り話をしたり鬼ごっこをしたりと特別仲が良かった。
なぜいきなり中学時代の回想から入ったかというとお察しの通り、功太にトドメをさされてから私は順調に友達止まりの片想いばかりをしてきたのだ。
正樹もそうだった。気付けば一番近くにいたのに…
けど正樹は忘れられなかった。今までにないほど後悔もした。
そして今までの私はでは考えられいことを実行に移そうとしていた。
私は、ななと智也に頼みこみ今日、この機会を手にいれた。友達を越えるチャンスを。
「久しぶり。髪金だぞ?」正樹の声。すぐ分かった。「久しぶりに会ってそれはないでしょ。」
いつもの会話。自然に笑みがこぼれる。
正樹は丸坊主だった髪が伸びチョット日に焼けてカッコよくなっていた。
「ヤンキーがいると思った。すっかり都会色に染まったなぁ」
正樹は地元の大学に進み、私は東京に就職していた。変わらないはずなのに変わっている。その感覚が私を戸惑わせた。
「二人とも早く行くよ〜」「遅ぇやつのおごりにするぞ〜」
智也とななが呼ぶ。4人で歩くこの感じ。私は嬉しかった。
予約していた居酒屋に到着した。個室でテーブルは堀ごたつになっていた。
「あたし奥〜」
ななは真っ先に右奥を陣取った。
「俺、ななの隣〜」
智也がななの隣に座った。と言うことは私は正樹の隣だ。2人はニヤニヤして私を見た。
「ミッキー奥行けば?」
「あ、うん。」
正樹のこういう紳士的な所好き。私は素直に左奥に着席した。
とりあえず全員生中で乾杯した。高校時代の思い出で話、今の職場や大学の話…尽きない笑いは久しぶりだった。就職してからは笑うことは少なく、いつも眉間に皺をよせていた。
正樹が隣にいることもあって私のお酒のペースは早かった。