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「運命の人」
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運命の人〜好き〜-2

そう言い放つと、塔也君は目を合わせようとせず黙り込んでしまった。
言ってる意味が分からず、途方に暮れる私をあえて無視したようにも見えていた。だけども、そのくせその横顔が照れてるようにも思えた。
私は、そんな沈黙を破ろうと何気ない話題を出した。

「うどんと雑炊、どっちがいい?」
「うどんがいいです。」

拗ねながらも、しっかり質問に応える彼が可笑しくて少し笑えてくる。そんな私を横目に見たものの、すぐに溜息をついて降参のサインを送られた。



夕飯時になって、ご要望のうどんが出来上がった。それをお盆に乗せて運んでから、私達の間にそれを置く。今日のは天ぷら付きで、少し頑張ってみたものだった。
食べ始まると、塔也君はいつもと変わらず食べるスピードが早かった。

「塔也君、一人暮しってことは料理も自分でするんだよね?」
「そうですね。」
「栄養バランスとか大丈夫?体調いっぱい崩したりしてない?」
「…先輩。」

塔也君は、いきなり食べるのを止めて箸をふちに置いてしまった。
余計なおせっかいだったかなと、不安は募っていく。

「ごめん。大きなお世話だったかな。」
「どうして、モテないと思うんですか?」
「えっ?」

あまりにも唐突に聞いてくる彼に、思わず聞き返してしまった。また、質問の主語が自分だと察知するのに時間がかかってしまった。

「俺のように先輩のことが好きな男、自分で気付かないだけで本当はいると思います。」
「え、でもそんな…。」
「男だって馬鹿じゃないんです。男と話せるから女としてモテるだとか、美容や成績などが自慢出来るとか、所詮そんなの通用しないんです。」

否定しようとも、何とも出来そうもない状況だった。何故なら、どこか彼は含みのあるようなものを見せていたから。
そして、以前彼の言っていたことを思い出してそれと関連があるのではないかとわずかに気付く。

「この前、塔也君私に言ったよね。何だか、…よく覚えてないんだけど。」
「俺だって失恋していたという話ですか?」
「そう!それ。…それと関係あるとか?」
「そうですね。実感したことでもありますから。」

コップの中のポカリを口に流し込む彼姿に男を感じつつ、話の続きを待ち焦れていた。
コップから離れた唇は開け閉じを何回か繰りかえしていた。

「あの時も言いましたが、顔や成績だのそんな部分にだけ相手にされていただけなんです。長く続いて一ヶ月、ただ見せびらかすために俺を隣に歩かせて、俺は散々利用されていただけ。案外、つまらなかった奴だと知られたら軽々しくフラれて終わりなんです。」
「で、でも、利用してたと言ってもやっぱり好かれてたんじゃ。」
「それはないと思いますよ。いつだって向こうが一枚上手で、そうして俺は無駄な時間を過ごしていたんですから。俺も少し張り切り過ぎたとこもあったけど。」
「張り切り過ぎたって?」
「好きかどうかは別に、モテそうな女子に駄目元で告白したんです。それを何回かやって、駄目になる度別な人と付き合ったりの繰り返しをしていたんです。…最低ですよね。フラれたらただ悔しいだけだったんですよ。どうのこうので、俺だって何人か利用してたんですよね。」
「そんな…。」
「我ながら恥ずかしいですよ。そんなこと繰り返して懲りないあげくには、今更本当の恋に落ちて。すごく馬鹿みたいです。」


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