『BLUE 青の季節』-1
第1章
あの輝く空の下で
真島信と宮前遥が初めて出会ったのは、週末の部活でのことだった。
練習を早めに切り上げロッカールームを抜けると、外は土砂降りでとても帰れるような天気じゃなかった。
しばらくその場で待っていたが雨はますます強くなり止む気配はない。
プールから残っていた部員が次々と戻ってくる様子を、信はぼんやりと見ていた。
「なんだ、お前まだいたのか?」
タオルで顔を隠した水原タケルが小走りでやってきた。
「帰れねえんだよ、傘持ってきてねえし」
「じゃあ、俺の使ってけよ」
タケルは体を震わせながら寒そうに言った。
「やなこった。お前と二人で相合傘かよ」
信は冗談じゃない、という顔をした。
「バカ。二つ持ってんだよ。一個貸してやるから黙って受け取れ」
タケルはそう言って乱暴に傘を投げ付けてきた。
信はそれを受け取ると彼を待って一緒に部室を出た。
「アレ、あの子・・・」
信はプールから戻ってくる集団の少し外れたところにいる女の子を指差した。
「なんだよ?」
とタケルが同じほうに顔を向けた。
「ウチの部にあんな子いたっけ?」
信は訝しげに彼女をまじまじと眺めた。
二年の春先まではサボりがちだった部活も、最近は毎日出ているから誰と誰がいるくらいは覚えているはずなのに。
「知らないのか。今年入った一年の宮前だよ」
「宮前?」
「宮前遥。お前、この前の歓迎会サボったろ。
補習が忙しいとか言って結局来なかったんだからよ」
知らなかったはずだ―――と信は思った。
当の宮前は雨のなかを歩きながらゆっくりと更衣室に向かっていた。
信が彼女を見たのはそれが最初だった。
※
「頼みがあるんだけど」
とタケルが言ったのは昼休み、教室で一眠りしようかと信が思っていた矢先だった。
「暇なヤツに頼んでもらえば?」
「だから、お前の所に来たんだよ」
信はあくびを噛み殺しながら恨めしそうな目でタケルを見た。