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『BLUE 青の季節』
【青春 恋愛小説】

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『BLUE 青の季節』-9

「もうちょっと右じゃねーか。それじゃ当たんないって」

「違うわよ、左よ。適当なこと言わないで」

「オイ、お前ら・・・・・」

「右だ」

「左よ」

「・・・・・・」

「右」

「左」

「やかましい!集中できねーだろがっ!!」


パンッ・・・・・・

信が怒鳴り声を上げると同時に、渇いた音が辺りに響いた。嫌な予感。後ろの二人はあっという間に静かになって、銃身の先をまじまじと見ていた。

「惜しいね、兄ちゃん。もうちょっとで当たったのに。じゃあ、これ参加賞だから」

そう言ってオヤジから手渡されたのはなんとも不細工な魚のストラップだった。なんてこった。あろうことか最悪のハズレくじを引いてしまうなんて。信はそのまぬけなストラップを見つめてため息をついた。

「先輩、元気だしてくださいよ。ほら、このヒラメ可愛いでしょ?」

宮前は努めて明るく言ったがタケルが「それマンボウだろ・・・・」と耳打ちすると、血の気の引いたような顔になった。

「いや、いいんだって。ゴメンな宮前。くま獲れなくってさ・・・・・・」

「そんな・・・・・・私は別に」

なにかまだ言いたそうな宮前に賞品を渡すと、辺りが急に暗くなって何も見えなくなった。
騒々と周りからにわかに騒ぎだすと美津子が不安そうな声をだした。

「ちょっと、なによこれ。停電かしら?」

「そろそろ始まるんじゃないか。なぁ、宮前・・・」

と信が言った。しかし宮前の返事はなく、急に腕をつかんだかと思うとそのまま暗やみの中を駆け出し始めた。

「宮前・・・?」

「こっちです、早く」

夜店の並ぶ道を抜けて古い木橋を越えると、深い雑木林のなかに入った。八月の蒸し暑い風が、二人の額から汗をこぼしていく。次第に宮前の息も上がっていって、地面を蹴る靴音と蝉の鳴き声だけが同じ間隔で信の頭のなかに響いていった。

「見えた!あそこです」

宮前が叫んだその先に開けた場所があった。そこは小高い丘になっていて、眼下には真っ暗になった夏祭りの様子が、微かに見てとれた。

「よかったぁ・・・。間に合ったみたい」

宮前はその場に座り込んで荒くなった息遣いを整えた。彼女がこんな調子なのだから信はもっときつかった。宮前の声になんとかうつむいた顔を上げる。


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