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『BLUE 青の季節』
【青春 恋愛小説】

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『BLUE 青の季節』-8

「ここで行かなかったら、俺は何の為にこんな合宿に来たのか分からねえ」

「・・・・・・そりゃ練習するためだろ」

タケルが呆れたように言う。背後から下駄の音がして、振り向くと浴衣に身を包んだ姿の宮前と美津子が歩いてきた。
宮前は鮮やかに染まった水色の柄を着ていて、それがとても似合っていた。

「おまたせ」

美津子がうちわを扇ぎながら暑そうに言った。

「別にお前なんか待ってねえよ」

信が小声で言うと、聞こえてるわよ、と美津子の鉄拳が飛んできた。

「そろそろ始まる頃ね。行きましょっか」

先頭に立った美津子がはしゃぎながら前を歩いた。
信達の合宿地で行なわれる花火大会とは、遠浅の沿岸沿いに広がっている小さな港町の数少ない祭りのようなものだった。
通りのあちこちには店が立ち並び、縁日さながらの雰囲気が感じられる。どこかから聞こえてくる太鼓の音が耳の奥に残っていった。

「わあ、今年も人がいっぱいねぇ・・・・・・ほら先輩、出店がいっぱい並んでますよ」

「見りゃわかるよ」

と信は言った。
宮前はきょろきょろと辺りを見回して、

「せっかくだしなにかやっていきましょうよ。ねえ、アレなんかどうですか?」
と近くの店を指差した。

「射的かよ・・・・・・」

「嫌ですか?」

宮前が首を傾げて言う。
別に嫌ではなかったが、こういう獲り物系のゲームはあまり信の得意とする所ではなかった。

「いいじゃないか、信。やってやれよ」

「そうよ。女の子の頼みは黙って聞くものよ」

後ろから勝手な野次が飛んでくる。結局、言い負けた信が射的に挑戦することになった。「毎度あり」と言った店のオヤジにコルク付きの銃を渡されると信はそれを持って構えた。

「一応、聞いとくけどなにがいい?」

「真ん中の大きなぬいぐるみ、お願いしていいですか」

宮前が選んだのは陳列された賞品の中で一番大きなくまのぬいぐるみだった。
両手では抱えきれそうにない程のスケールを持ったくまを、コルク銃で倒すのはどう考えても無謀だった。

「兄ちゃん、よぉ〜く狙えよ。彼女が見てるぞ」

射的屋のオヤジが余計なことを言う。
黙ってろ、オヤジ。心の中で呟いた。再び集中しようと目を凝らす。しかし今度は背後からタケルと美津子の言い争いが聞こえてきた。


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