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『BLUE 青の季節』
【青春 恋愛小説】

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『BLUE 青の季節』-4




バスを降りると、視界の先には海が広がっていた。
波打ち際から吸い寄せられるような音が規則正しく耳の奥に響く。
東から昇り始めたばかりの太陽に、海が赤く映えていた。

海岸線沿いの向かいに建てられたスタジアムから歓声が上がる。

信が入り口のところで待っている人物に気付いて、声をかけた。

「よお」

タケルは閉じていた目を開けると、信をチラッと見た。明らかに不機嫌そうな表情だ。

「わりぃ、ちょっと遅れた」

「ちょっとだと・・・・・・?」

タケルの目つきがさらに鋭くなった。

「二時間も遅刻してくるヤツにしては、反省の色が見えないな」

「まあ落ち着いて・・・・・・とりあえずオレの言い訳を聞いてくれないか?」

「聞きたくない」

と信の申し出を一蹴して、呆れたような声をだした。

「あのなあ、信。
昨日電話でしっかりと言ったよな?朝六時に現地集合だって」

「言った。確かに言った」

と信は何度も頷いて確認した。

「俺、自分の記憶を疑いそうだよ・・・・・・」

頭を押さえ込んでタケルが呻いた。
目の前の建物からは一層悲鳴のような歓声が大きくなっていく。
何かすごい記録でも出たのだろうか。
信は気になって、隣で険しい顔をしていたタケルに聞いてみた。

「すごい盛り上がりだな。新記録でも出たのか?」

さあ、と彼は曖昧な返事をした。

「行ってみようぜ」

信はタケルの腕をつかむとグイグイとスタジアムの中へと入っていった。



暗い通路だった。
入り口から二階の観客席に向かう階段を上がっていく。頭上にはぼんやりとした橙色の灯火が小さく揺れていた。

顔をあげた目線の先に、光が見える。
その光が次第に大きくなっていくにつれて、外の歓声も耳に強く響いた。
煩いのは苦手な信だったが、今日ばかりは何故かそれほど気にならない。
タケルの腕を思い切り引っ張って一気に階段を駆け上った。


・・・最初からそう思っていた。

彼女は違う、と。
他の人にはない輝きを持っていると。
いつかTVで観たオリンピックの選手が金メダルを獲った後に、カメラの前で見せた幸せそうな笑顔。

幼い信にでも分かった。
この人は誰にも真似できない星の下に生まれてきたのだと。


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