『BLUE 青の季節』-3
「失礼します」
と言って部屋を出た。
手に持った大きなメダルからは重さしか感じない。
誰かの勲章だからなのか分からなかったが、信にとってはそれだけの価値しかなかった。
「悪いな、こんな雑用みたいなことに付き合わせちゃって・・・・・・」
「別にかまいませんよ」
彼女が首を振ってそう答えた仕草に、嫌そうな素振りは全くなかった。
「今度、なにかおごってください」
「え?」
「冗談ですよ、冗談」
と宮前は言った。
こんなに明るい子だと思ってなかったから正直、意外だった。
信が閉口してしばらく黙っていると、
「あ・・・・・・。もしかして怒ってます?」
申し訳なさそうに彼女はこちらの顔を伺うと、整った眉を寄せた。
「怒ってないよ。よく喋る子だなってちょっとびっくりしたんだ」
と、信は言った。
「へえ、私ってどんなイメージだったんですか?」
彼女は興味津々、といった様子で聞いてくる。
信は当惑した。
なんて答えたらいいものか。
実際、初めて宮前を見たとき彼女は一人で雨の中を歩いていた。
その背中が何故か、少しだけ寂しげに映ったからか、信は彼女の人間像を勝手に造り上げていたのだ。
「そうだな、真面目で近寄りがたいって感じはあった」
初見だけどね、とそう付け足してフォローしておく。
「相当悪かったんですね、私の第一印象」
と宮前は首をかしげてみせたけど、言うほど腹を立てている様には見えなかった。
「あくまで見た目の話だからな」
「でも先輩は、私が想像した通りの人だったよ」
と、宮前は言った。
「カッコイイとか思ってた?」
まさか、と宮前はくすくす笑っていった。
「想像どおりの怠け者だったわ」