『BLUE 青の季節』-2
「なるほど。で、用件は?」
「宮前のクラスに行ってきてほしいんだ」
意外な名前が出て、信は思わずパッと起き上がると横にいるタケルを見上げた。。
「何で?」
「実はこの前の大会で獲ったメダルが、やっと届いたんだ。事務室に置いてあるみたいだから、悪いけど二人で取ってきてくれないか?」
とタケルは言った。
「それなら、宮前だけでも充分じゃないか」
「アイツ、まだ入学したばっかで分かんねーだろ。
お前が行って案内してやれ」
「めんどくせーなぁ・・・」
と信が不満を漏らすと
「とにかく行け、今すぐ行け。後でちゃんと確認するからな」
そうやってピシャリと言うと足早に教室から出ていった。
信は一度伸びをして、重い腰をあげるとチラッと窓の外を見た。
向かいに建った校舎に一年生のクラスが並んでいる。
しょうがねえな、と心の中で呟いてのろのろと宮前の教室に向かう事にした。
扉の外から様子をのぞくと案の定、宮前遥は自分の教室にいた。
彼女は窓際の席に座って読書をしている。その姿がなんだかとても様になっていて、信は声をかけようか少し迷った。
とりあえず近くの生徒に呼び出してもらうと、こちらに気付いた彼女が顔を上げた。
自分を呼んだ相手が信だと知って面食らったのか、きょとんとしている。
「宮前」
と信は言った。
「今、ちょっといいかな?」
彼女が頷いたのを見て信はタケルの言っていた用件をそのまま伝えた。
「分かりました。事務室まで行けばいいんですね」
「場所、わかる?」
「はい」
宮前がはっきりと答えた。一人で行けるのなら信の役目はここで終わりだった。物足りない気もしたけど、彼女についていく理由がなかったから仕方ないんだ、と自分に言い聞かせた。
「そっか。じゃ、よろしくな」
と信が背を向けると・・・
「ダメですよ、真島先輩」
クスクスと笑いながら、彼女はそう呼び止めた。
「部長から聞いてますよ。先輩が来たら引きずってでも連れてけって」
振り返ると思ったよりも柔和な表情で宮前が立っていた。
「さ、行きましょ」
その笑顔につられて信も苦笑をこらえることができなかった。