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『BLUE 青の季節』
【青春 恋愛小説】

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『BLUE 青の季節』-19

「傷つけたくねーんだ、遥も・・・お前も」

吐き出した言葉の意味が少しでも彼女に伝わればいい、そう思った。

ぐすん、と鼻を鳴らす音がしてゆっくりと手が離れていく。
向き直ると、照れ臭そうに笑った彼女と目が合った。そこにはもう、ちゃんと幼なじみの美津子がいた。

「へへ・・・。ごめんね、私。どうかしてたのかな?」

「いいよ、忘れっから」

そうして、と美津子は軽く笑う。そうやって何もかもを胸の奥に押し込みながら。きっと、触れることはできない友達としての限界が其処にはあって、それ以上踏み込めばたぶん二度と戻ることはできないんだ。

「あーあ。でもちょっと残念だな、」

美津子はため息を吐くと大げさに肩をすくめた。

「・・・とか思ってるでしょ、実は」

「いや、別に」

「どうする?今なら胸くらい触っても黙っててあげるけど」

からかうようにふざける美津子に信は首を振って答える。

「いい。お前のないモノ触ったって意味ねーもん」

・・・バキッ!

と鈍い音がしていつもの鉄拳が飛んできたのだと気付いた。あの日張られたビンタより、尋常じゃないほど痛い。でも、跡は残らない・・・。

「サンキュ・・・」

叩かれた頭を押さえながら信は呟いた。
――これで俺たちはまた、友達に戻れる。

取り戻せないたくさんに気付けずに、失った物が山のようにあった。
こうなる事をどっかで感じながらも、「現実」になるまでほっておいた自分がいた。

もう昔には手が届かないけど、お前はずっとこのままでいてくれるって、思ってる。そう願ってる。

変わらない、大切な・・・友達で。



第3章
誓い


真っすぐと青空に伸びてく飛行機雲に信は目を細めた。じりじりと、地面に照りつける日差しも今は気にならない。
競技場に集まった各高校の生徒や応援団が一様に信を見ている。いや、正確には信を含めて。
コース上には八人の選手が並んでいる。どれもこれも他校のエース級の選手だ。さすがにいかつい体をしているなあ、と呑気にも信は思った。

「よーい・・・」

スタートの合図に一気に緊張が走って集中を取り戻した。今は、余計なことを考えるな。ただこの100M弱のレースを、最後まで泳ぎきることにだけ気持ちを巡らせていればいい。


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