第二十三話-1
終わりよければすべてよし、と昔から言う。
けれども、アナルセックスは大成功だったとして、その前の浣腸排泄はどうだったかまだ気になる。
プレイの最中の彼女の様子を思い出すと、少しやりすぎちゃったかなというのが正直なところで、
彼女が上機嫌なまま帰らせて、聞かずにおこうかと思っていたが、次のこともあるし、勇気を出して聞いてみた。
「あの…その前の、浣腸はいかがでした?」
そう聞くと、ニコニコしていた表情は、途端に神妙な面持ちに変わった。
しまった、と思っていたら、彼女はこう答えだした。
「正直、死ぬほど恥ずかしかったし、辛かったです…。」
俯きながら言葉は続く。
「だって、おトイレを覗かれたりしただけで、とてもショックなのに…。
必死で我慢してるところとか、出してるときとか…。いろいろと全部、間近で見られちゃったんだもの…。」
やっぱり聞かない方がよかった、そう後悔した。
「でも…。」
そう思っていたら、彼女が少し意外で、救われることを続けてくれた。
「でもね、女の子として見られちゃいけないものを見られてしまった、見せてはいけないことを見せてしまった…。
それも嫌がってるのを無理やりにね。
なんかそれって、一線を越えちゃったみたいで…。
後からそんなこと考えていたら、ゾクっとしました。」
「いけないことをされて、すべてを暴かれて、快感だった、てこと?」
「上手いことおっしゃいますね。多分そう。
プロセスはとても辛いものだったし、ショックだったけど、最後にたどり着いた結果は良かった、てことかな。」
後席のひとみ嬢は、さきほどまでとはまた違った口調で、饒舌に続ける。
「お尻でのHも、いけないことなんだと思うけど、
『私、あんなことされた後で、またいけないことしてる…。』
って思いながらHしてたら、なんかもう…めっちゃ興奮しました。」
背徳感から来る快感を得ていたのは、彼女も同じだったようだ。
そして、そんな中での究極の羞恥は、彼女を本格的にマゾヒズムに目覚めさせたのかもしれない。
個人的にも、次回の来店が楽しみになってきた。
しかし、こっちが聞き出すまで、恥じらってそれをはっきりと口に出せなかったこともそうだが、人前での排泄行為や、アナルセックスを不道徳なことと感じる倫理観は、やはり育ちの良さから来るものなのか。
思わぬところで、僕はこの女性の上品さを感じた。
さて、彼女が饒舌なうちに、聞きたいことを聞いておこう、そう思って僕は聞いてみた。
「じゃ、次も浣腸はメニューに入れときますか?」
「そ、そんな風にストレートに聞かれたら、『はいどうぞ』とは言いにくいです…。
さ、察してくださいよ。お願いします。」
ああ、さっき彼女の心の機微を察したばかりなのに、早まってしまった。
すぐに僕は言い直した。
「じゃ、じゃあ言い方変えます。
『次もまた、たっぷり辱めて差し上げます。』
これでいいですか?」
「はいっ。ご主人様の従順なこの奴隷に、目いっぱいお仕置きしてください!」
バックミラーを通して、ひとみ嬢は顔を赤らめて、しっかりとこっちを見てそう答えた。
改めて、素敵な人だな、と僕は思った。
−完−