Requiem〜後編〜-7
「・・・・1人で大丈夫?」
セッツァーの身を案じるセリス。だがダンジョンの中にいるモンスターに対する懸念だけでなく、
以前には感じなかったダリルに対する微かな“嫉妬”が混じっていることにセリス自身気づかざるを得なかった。
良きライバルとして競いあってはいたが決して男女の関係にはならなかったと聞いているセッツァーとダリル。
だが既にセッツァーと結ばれたセリスとしては、セッツァーの中を占めてい女性の存在が今まで以上に自分に対して迫ってくる。
「俺を誰だと思っているんだ?勝手知ったる場所さ。仮にモンスターが出たとしても、それくらいのレベルなら俺1人で問題ない」
「・・・・分かったわ。じゃあ、これから船を発進させるわけね」
セリスの問いにセッツァーも頷く。
既に二人の前にあったコーヒーカップは、お代わりを繰り返し空になっていた。
「ああ・・・・・そこで、提案があるんだが」
「何?」
「今夜が最後になると思うが・・・夜はコーリンゲンの宿屋に泊まらないか?」
「 !! 」
セッツァーの申し出に、セリスは思わず目を見開き正面にいるセッツァーを見返す。
目の前に座るセッツァーは平静を装っているかのように見えるが、
今のセリスから見て内心気恥ずかしさを覚えているのではと思ってしまう。
これも身体を重ねた者同士が分かりあう感情の機微、といったところだろうか。
「復興が進んで人は増えているとはいえ、別に村祭りとか催しの時期でもない。宿屋の部屋をとるのも難しくはないだろう。夕食は宿屋か、或いは村の中の手頃な場所で済ませればと思うが」
あえて夜については、を続けないセッツァー。
だが彼の申し出に、
セリス自身先程までダリルに対する微妙な感情の波が収まっていくのが分かった。
「悪くないわね。それでいいわよ」
「分かった。それじゃとりあえず村の郊外でお前を下ろしてから、俺は墓参りにいく。そっちの方が早く済むだろうから、先に宿屋に行って部屋をとっといてもらえるか?」
「分かったわ」
さあ善は急げだ、と呟きながら立ち上がり準備にかかろうとするセッツァーの背中を見つめながら、
セリスは改めて思った。
トランプやダイスを巧みに操るギャンブラーとしてもいいけど、
やっぱりセッツァーは船を操る姿の方がいいわ─────