Requiem〜後編〜-6
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────再開した朝食を終え、セッツァーが淹れ直したコーヒーを手ずからポットからカップに注ぎ終えた後、
セリスはカップの縁に口をつけながらふと自分の正面に位置する壁時計を見た。
時計の針は昼の1時を20分ほど過ぎたところを指していた。
「だいぶ時間は過ぎちゃったけど、今日中にコーリンゲン村に行って墓参りを済ませてしまいたいんだけど・・・大丈夫?」
セリスの言葉に、
セッツァーはやや芝居がかった仕草で両手を大きくかかげ、
おいおいと言わんばかりの表情で応えた。
「・・・聞くだけ愚問だったわね。何せ私が乗っているのは、世界最速のファルコン号」
「あと操舵するのがこの俺だからな」
互いに笑いあい、セリスはカップの中身をゆっくりと飲み干した。
「コーリンゲン村ではレイチェルさんの墓に詣でようと思っているの。色々あったけど、私の人生に大きな影響を与えた人なのには変わりないから」
一瞬セリスの脳裏を、
レイチェルやかつての仲間であるトレジャーハンターのロック・コールの顔が走馬灯のように霞めていった。
「なるほどな・・・・・」
「それで貴方はどうするの?今までみたいに船に残ってる?それとも、近くのコロシアムにでも?」
セリスの問いかけに、
セッツァーは無言のまま既に空になっていた自分とセリスのカップにポットのコーヒーを代わる代わる注いでいく。
「俺か・・・・俺はダリルの墓にでも行ってみようかと思っている」
「 !! ダリルさんの・・・・・」
ダリルの墓自体はセリスも知っている。
コーリンゲン村の西側にあり、地下ダンジョンの奥にあり、世界崩壊によってブラックジャック号の代わりに本来の持ち主でセッツァーのライバルだった女性ダリルの棺がある場所。
そしてセッツァーによって直された彼女の愛機でもある、今セリス達のいるファルコン号が安置されていた場所でもあった。