Requiem〜後編〜-21
「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」
呼吸を整えながらゆっくりと上体を起こそうとした刹那、
セリスの身体はフワリと闇の中を浮き上がっていた。
熱と汗を帯びた肌に男の筋肉の熱と固さを感じつつ、
セリスは自分を見下ろすセッツァーの言葉とやや荒い息づかいをぼんやりと聞いていた───────
「・・・・・これだけでは足りないぞ、セリス。
次はベットの上で・・・・これからお前と離れていた時間をしっかり埋め合わせるからな」
「いいわ・・・・セッツァー、好きなように────────」
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─────墓参からフィガロ城に戻ってから5日後、
────セリスは普段王妃として振る舞う際に着るドレス姿でフィガロ城地下にいた。
────フィガロ城地下
────宝物庫
薄暗い室内には漂う独特のかび臭さや漂う埃が、最近倉庫内に人が入ったことがないことを示している。
セリスがいるのは、
倉庫内に複数設けられている区画の1つ、
入り口から死角になっており、
そこからはセリスの姿を視認することはできない作りになっている。
一見目立たない場所にあるが、天井にまで届くような棚に様々な王国伝来の品々に紛れて、
セリスの“私物品”も整頓して置かれてある。
周りにはシートを被せられた絵画や銅像、箱詰めにされた衣類、装飾品更には書籍までがところ狭しと並んでいる。
そんな中にあって、
セリス自身がここに納めてあるのは、
個人的にはあまり人目につかないように“配慮すべき品々”。
世話をしてくれる侍女達や夫にも見せるのが憚られるものばかり。