Requiem〜後編〜-12
─────それから1時間後、
部屋に戻ってシャワーを浴び、
湯上がりの顔に手慣れた手つきで化粧を施してから、
セリスはセッツァー“特注の服”を身にまとい、自分の部屋の隅にある鏡台の前に立っていた。
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鏡の前に立ったセリスは流石に言葉を失っていた。
それは想像していた以上の淫らさ、言い替えればセッツァーの“願望”が何かを如実に示しているものだったのだから。
“真に男を誘う装い”、とでも言うべきだろうか。
真っ白い生地の“スリーインワン”。
表面には様々な種類の花が彩られたレース調のブラジャー、ウェストニッパー、そしてガーターベルトの組み合わせ。
単純にセッツァーの用意した物だけを身につけたならぱ、下腹部を覆うショーツはない。
その為鏡に映るセリスの下腹部には金色の茂みが彼女の身体の動きに合わせてユラユラと揺れていた。
その反面、下着とは対象的に装飾品には文字通り手の込んだ物だった。
額にはフェロニエール、
耳にはイヤリング、
首にはネックレス、
そして両腕にはブレスレット。
全て銀を基調にした造りになっており、それらが揃うことでセリスの金髪と白く張りのある肌をより際だたさせていた。
この短期間、しかも都市部から離れた村で調達できるような品々ではない。
セッツァー自身がセリスとの墓参の旅に合わせて、或いは以前から手元に用意していたことは明らかだった。
────外気に曝け出された裸体を薄紫のナイトローブに包むと、セリスは素足のまま部屋を出た。
今自分がしていることに最後の最後まで戸惑いとためらいが全くないといえば嘘になる。
ただ、女とは1度でも男に対して身体を許してしまえばこのようになってしまうのか。
一方で、
これまでの男性遍歴、そしてセッツァーとの2度の“感応”を経ることにより、
部屋に置かれた鏡の前で自らの変身ぶりを確認してからは先程まで微かに残っていた迷いをふっ切ったかのように流れる動きで部屋を後にしている自分がいる。
セリス自身自分の背徳を求める女の性に正直驚いていた。