メリッサ-3
風呂に入ろうとしていつもの通り裸になってから着ていた服と下着をダイニングテーブルに置いた。それから何時彼女が部屋から出てくるか分からないということに気付き、脱いだ服を持って風呂に入った。どうも甚だしく不自由なことになったものである。風呂から上がって布団の上に俯せになって本を読んでいると彼女が部屋から出てきて風呂に入った。俯せになっていたから上の方までは見えなかったが裸の足が膝の上まで見えた。さっきはミニスカートではあったが、今はもっと上まで裸の脚が見えたような気がする。まさか下着になって風呂場に向かったのではないだろうな、いや、外人だからひょっとすると素っ裸になっていたのかもしれないななどと思い悩んでしまった。何しろ和彦は外人アレルギーといえるくらい外人嫌いなのに外人女性には異常な興味があるのである。いや、外人でなくとも要するに女でありさえすればいいのだ。そんな訳でそれから後は気が散って本を見ても少しも活字が頭に入ってこない。もう電気を消して寝ようと思ったが電気を消せばリビング・ダイニング全体が暗くなってしまう訳で、何か風呂場から出てくる彼女を暗闇で待ちかまえているかのような状況になってしまう。仕方なく彼女が出てくるまでは電気を点けておくしかないと思った。
翌朝物音で目が覚めると彼女が台所で何かしている。寝間着を着替えてカーテンを開けてみると彼女がパンを囓りながらジュースを飲んでいた。
「ほう、パンとジュースを持って引っ越して来たのか」
「おはよう。パンとジュースは今そこのコンビニに行って買って来ました」
「え？ それじゃドアの鍵はどうしたの？」
「まだ鍵を貰ってないからそのまま出て行きました」
「鍵を掛けずに？」
「そうです」
「それあまずいな。仕方無いスペア・キーを渡しておこう」
「有り難う」
「そんな味のないパンを囓っても美味くないだろう。冷蔵庫にバターが入っているから付ければいい」
「使ってもいいのですか？」
「うんまあ、それくらいはいいよ」
「有り難う」
「名前は何と言ったっけ」
「メリッサです」
「メリッサは何人？」
「アメリカ人です」
「今何年生？」
「１年です」
「ああ、僕と同じか」
「カズは何学部ですか？」
「僕は法学部」
「私は国際関係学部です」
「ところで服だけど、もう少し何と言うか、普通の服は無いの？」
「これは普通の服です」
「そうだけども僕は男だし、此処は僕と君しかいないんだからもうちょっと大人しいというか、えー、外人だと大人しいでは分からないか。もうちょっとセクシーじゃない服は無いのかな？」
「セクシーじゃない服？ これは唯のＴシャツとショーツですよ」
「そんな小さいＴシャツがあるか。おっぱいの膨らみの上半分は出てるし下も臍が出てるじゃないか」
「何処か変な所が露出していますか？」
「いや、別に変な所は露出して無いけど、その下はノーブラなんだろう？ 乳首が突き出してるもんな。それにショーツと言ったら日本語では下着のことで、下着じゃない奴はショートパンツと言うんだ。でもそれって、日本語で言ってもショーツとしか言えないよ。まさかその格好で外には出られないだろう？」
「どうしてですか？ 下着に見えますか？」
「見えるさ。あそこに食い込んで縦皺が出来てる。その下には何も穿いてないんだろう？」
「厭らしい所を見てるのですね」