記念日(5月31日Ver)-1
世の中には、記念日がたくさんあります。
皆さんは、どのような記念日をご存知でしょうか?
例えばそう・・・5月31日は?
卒業までは教師と生徒。
そんな約束をして、俺、森山 愁は宮原 佑奈とこの4ヶ月教師と生徒の関係を崩さず過ごしてきた。
「もう、愁ちゃんてば。そんなに煙草吸って肺癌とかにならないでよね。」
相変わらず、何度注意しても俺のことを『森山先生』とは呼ばず『愁ちゃん』と呼んでいる。
そんな宮原は3年になり、進路の相談・・・という理由のもと、この進路相談室に度々俺を呼び出す。
ぷくっ・・・と剥れながら俺の顔を覗き込んでくる。
「んぁ?今更だろ?」
上目使いにどきどきしながら何でも無いことのように誤魔化す。
残り少なかった煙草を灰皿に押し付けた。
こんな校内とはいえ、個室に2人きりの状況を作るなんて・・・。
こっちの身にもなって欲しい。
今すぐにでも抱きしめたくなる衝動を寸前の所で押さえる。
卒業までは我慢、我慢・・・。
早くなる鼓動を宮原から目を反らすことで落ち着ける。
この行動は確信犯なのか、天然なのか・・・。
「そんなに、煙草って美味しいの?」
ふいに聞いてくる。
美味しい・・・っていうか。
・・・そういや、前、煙草の常習ってのは自分が欲しいとか必要なわけじゃなくて脳が欲するってテレビでやっていたっけ。
「美味しいっていうか・・・ないと口寂しいんだよな。」
脳が自分の意思とは無関係に欲するからな。
結局は吸わずにいられないってやつ?
「ふぅ〜ん。・・・じゃぁさ。」
唇をアヒルのように尖らせ、う〜んと首を捻った後、悪戯を思いついたようなわくわくした顔が近づく。
何を考えているのやら。
視界の片隅に映る宮原をそのままにしていると、どんどん顔が近づいきた。
『おい。』と流石に声を掛けようとしたところに
ちゅ・・・と柔らかい唇が触れた。
「・・・・・・・っ。」
驚いて唇を離すと
「こうしたら、寂しくないんじゃない?」
禁煙できるかも〜、と宮原は照れくさそうに笑った。
ほんと、俺の心情を少しは解かってくれよ・・・。
5月31日は「世界禁煙デー」
国連の世界保健機構(WHO)が、世界人類のためにと設けた日。
〜Fin〜