伝統-2
「で、早速なんですけどね、早霧先輩。」
「何かしら、由衣ちゃん。」
「チームワークを高めるために、親睦しません?」
「親睦って何よ、由衣。」
「決まってるじゃない。三人で実戦練習。」
「ああ、なるほどね。それはいいわね。」
早霧が制服ブラウスのボタンに手を掛けた。
「でしょ?」
由衣が凜花のスカートの裾を掴んだ。
「な、何言ってるんですか、二人とも…」
そう言いながら、凜花は自分のパンティを掴み、摺り下ろし始めた。
その時、音もなくドアが少しだけ開いた。そこには、三人を見つめる瞳があった。
「あ、ごめん。」
狭霧が声をあげた。
「な、何ですか。」
すっかりその気になっていた凜花が自分のパンティを半分ズリ下げた状態で硬直した。
「由衣ちゃんとね、その件で色々まとめとかなきゃいけないのよ。それもあって来てもらったの。」
「あ、そうでした。へへ。つい雰囲気に押されちゃった。ごめんね、凜花ちゃん。」
もう全部脱いでしまってる由衣があっけらかんとそう言った。
「分かりました。」
凜花はパンティを履き直し、テーブルの方に歩きかけた。
「うーん、事務的な話しか無いから、あなたに居てもらっても退屈なだけにちゃっちゃうわ。」
「え?はあ…」
「それより、彩音ちゃんの方をお願いしたいんだけど。」
凜花の顔が引き締まった。
「そうですね。今は、とても大切でデリケートな時期ですから。」
「そういうこと。」
「では、失礼します。」
着衣の乱れがないか確認しながら、凜花はドアへ向かった。
「あ、そうそう、空いてる部屋は自由に使っていいからね。この時間、他に誰も居ないと思うし。誰も居ない、と思うし。」
「さ、早霧先輩…」
凜花は左頬をピクっとさせながら狭霧に会釈した。
「じゃあね、由衣。よろしくね。」
「まったねー。ごきげんよー!」
狭霧と由衣の二人は、凜花が役員室を出るのをしっかり見送った。
「それにしても…どうして私を選んだの?狭霧。」
さっきまでとはうって変わって、少し緊張した様子の狭霧が答えた。
「あの子は…凜花は生真面目すぎる所がありますから。全ての真実を受け入れる前に壊れてしまうかもしれません。でも、由衣さん、あなたなら…」
「まあね。だからといって、まさかの逆指名。最初に言われた時には笑っちゃったじゃない、意外性が有りすぎて。」
「すみません、様々な可能性を未来予測した結果、他に答が無かったんです。由衣さんを指名してしまうなんて不遜なことだとは分かっているのですが。」
「いいのよ。怒ってるんじゃない。久しぶりに現場で遊べるわけだし。」
「でも、そのせいで丘を一つ壊してしまいました。あそこは我々にとって大切な場所の一つだったのに。」
「運命が選んだ凜花ではなくて私を選んだんだから、そのくらいの犠牲はしょうがないわ。」
由衣が、狭霧の唇に指先を這わせながら、話を続けた。
「むしろあれだけで済んでラッキーよ。」
「ありがとうございます、由衣さん。」
そう答える唇は微かに震えている。
「ま、それはそれとして。」
狭霧のブラを捲り上げ、剥き出しになった胸をさすり始めた。
「久しぶりに、どう?」
「え…」
狭霧の瞳は既に潤いを浮かべている。
「う、うう…」
由衣が乳首の周辺に指を這い回らせる度、狭霧は声を漏らした。直接触られるより、周辺で焦らされたことで、より欲情が高まってしまったのだ。
「あなたの言う通りね。伝統を守ることに意義はない、未来のために伝統はある。そして、それは進化しなければならない。」
「あ…、あはぁ…」
狭霧にはもう由衣の話を聞く余裕はない。指先一つで女を自在に操る伝説の女にとって、小娘一人を情欲に狂わせることなど稚戯に等しいのだ。
「くあっ!ああっ!」
制服スカートの下の白い太腿を這い上がり、パンティの隙間から侵入した由衣の指先が、狭霧の敏感な肉の蕾の根本に軽く触れただけで、狭霧は身をくねらせた。
「たとえそのために、貴重な人材を二人も失ったとしても。」
口元に皮肉な微笑みを貼り付けた由衣。理性を持たぬ人形の様にされるままの狭霧。
二人は見つめあったままベッドへと沈んでいった。
「いいの?凜花。」
心配そうな目で見つめる彩音に、凜花が答えた。
「いいのよ。あっちはあっちで好きにすればいいわ。」
「でも、まさか由衣を投入してくるなんて。」
「切り札を使ってきた、ということは?」
「そうとうに追い詰められてる…」
「そう。チャンスと見るべきね。」
「凜花…」
彩音の顔に、花のような笑顔が広がった。
「やっぱり凄いわ、あなたって。」
裸の胸に顔を埋める彩音。それを抱きしめる凜花。
「さ、さっきの続きをしましょ。」
「そうね。私もう、疼いちゃって…」
「ふふ。可愛い彩音。いつまでも私のものよ。」
胸の中の彩音の髪を撫でる凜花。
「ああ、凜花。私の…凜花。」
凜花の腕に抱かれた彩音は、ひっそりと口元を歪め、声を出さずに笑った。
名門、私立花乃森女学院。
その敷地は広大で、その歴史は長大。
その卒業生、在校生及び関係者は莫大で、日々思い想いにそれぞれの思索を巡らせる。