美雪-9
「だから金がある時は割り勘にするって言っただろ。その時は金が無かった」
「それじゃどっちにしても女の子に払って貰うつもりだったのか。それならハングル宴にすれば良かったのに」
「ああ。彼女は高くてもかまわないと言っていた」
「本当?」
「ああ」
「何でお兄ちゃんって、そんなにもてるんだろ」
「お前みたいにオナラしたりしないからだろ」
「馬鹿。私だってデートしてる時にオナラなんかしないもん」
「デートの時だけじゃなくて俺と一緒の時もオナラするなよ。焼き肉屋でオナラなんかされたら俺は逃げるぞ」
「馬鹿。食事してる時に誰がオナラするのよ」
「お前が」
「食事してる時にしたことなんか無い」
「だから念のために注意しといたんだ。キムチ食べるからな」
「キムチ食べるとオナラが出るの?」
「そうじゃないけど、どうせ臭いから分かんないだろうなんてオナラすんじゃないかと心配したんだ」
「馬鹿。私のオナラは匂いなんかしないもん」
「嘘付け。オナラは誰だって臭い」
「私のは臭くない」
「そんな馬鹿な」
「そんな馬鹿なって言っても臭くないんだから」
「自分のはな、文句言う相手がいないから臭いと思わないんだ」
「お兄ちゃんのは臭いの?」
「知らん。俺はオナラなんてしたことないからな。大体どうやったらオナラが出せるのか知らないんだ」
「嘘」
「いや、本当」
「それなら何でオナラはみんな臭いなんて知ってるのよ」
「まあ社会常識だな」
「うまいこと言って」
「なんかやっぱり雰囲気いいなあ」
「高そうね」
「高そうなんじゃなくて高いんだ」
「何食べる?」
「俺はカルビ」
「私、レバーにしようかな」
「レバー? あんな不味い物食うのか?」
「嫌い?」
「俺は嫌いだな」
「それじゃタンにしよう」
「別にレバーでいいよ。お前の食いたい物食えばいいんだ」
「それじゃレバーとタン」
「俺はカルビとカルビ」
「え?」
「だからカルビ二つ」
「ああそうか」
「それからキムチ」
「ナムルとサンチュウと卵スープ」
「ちょっと金があるからユッケも頼むかな」
「はい。カルビ2つ、レバーとタン、キムチとナムルとサンチュウと卵スープ。それにユッケ、以上ですか?」
「うん」
「ねえ、明日から私が夕飯作るんだけど、何がいい?」
「コンビニで弁当買えばいいさ」
「駄目。私がちゃんと作るから」
「お前料理なんか出来るのか?」
「出来るよ」
「何が出来る」
「何でも」
「本当か?」
「うん」
「それじゃ何でもいい」
「何でもいいんなら何が出来るなんて聞かなければいいのに」
「お前の得意な奴でいい。そうでないと不味くて食えないだろう」
「馬鹿にして」
「ほら見ろ」
「本当。凄いお肉ね」
「な? 見るからに美味そうだろ」
「うわぁー、キムチも凄い量」
「二人で食べるのに丁度いい」