美雪-24
「三角関係の女が嫉妬して聞いてるみたいな質問だぞ、それは」
「三角関係なんて汚い関係じゃないわ。私とお兄ちゃんは実の兄妹じゃないの」
「そうだよ。違うなんて言ってない。それがどうしたんだ」
「それが分かってたら高校生なのに女の人とホテルに行くなんて出来ないでしょ?」
「お前ちょっとおかしいぞ。高校生だからホテルなんか行くなって言うのは分かるけど、それがお前と何の関係があるんだ」
「だってまだ高校生じゃない」
「だからそれは分かる。でも今は高校生で肉体関係を結ぶ恋人同士なんてザラにいるんだぞ」
「やっぱりあの人お兄ちゃんの恋人なんだ?」
「だったら悪いか」
「そうなの?」
「何が?」
「だから恋人なの?」
「そうだ」
「うーん」
「何力んでんだよ。お前だって柳田のこと恋人だと思ってんだろ」
「私のことはどうでもいいの」
「どうして。同じことだろ」
「私のことなんてどうでもいいの」
「それは不公平な言い方だ」
「そんなことどうでもいいから。それよりお兄ちゃんは私とあの人とどっちが好きなの?」
「何? お前どうかしてんじゃないのか」
「何で」
「お前は俺の妹なんだぞ」
「だから好きじゃないって言うの?」
「だから好きだ嫌いだという関係ではないと言ってるんだ」
「兄妹だと好きにはならないの? 私のことが嫌いなの?」
「嫌いだなんて言ってない。妹に対する気持ちっていうのは特別で、他人と比較する訳にはいかないだろ。そんなことも分からないのか」
「特別なの?」
「それはそうだ。生まれたときから一緒に育ってる人間と他人とを比較なんか出来るか」
「そうか」
「そんなことも分からないのか」
「ううん。それなら分かった」
「お前少しおかしいぞ。まるで嫉妬してるみたいに聞こえる」
「嫉妬したら悪いの?」
「何でお前が嫉妬しなけりゃならないんだ。お前は俺の妹なんだぞ、何度も言うけど」
「それが分かっていればいいのよ」
「そんなこと分かっているに決まってるじゃないか。お前柳田と何かあったのか?」
「何で?」
「少し精神的におかしくなってるんじゃないかと思って」
「何で?」
「俺が優花と恋人だから嫉妬するなんて普通じゃないぞ」
「嫉妬っていう訳じゃないけど」
「嫉妬だろ。嫉妬したら悪いのって聞いたじゃないか」
「妹に対する気持ちは特別なんだって言ってくれたから納得出来た」
「お前は子供だなあ」
「どうして? お兄ちゃんのことが好きだと子供なの?」
「いくら好きでも兄妹で恋人同士になんかなれる訳ないだろ」
「そんなこと分かってる」
「だったらどっちが好きかなんて聞くな。気持ち悪い」
「そうだね。比較にはならないんだったよね」
「そうだ」
「って、つまり私のことは妹として特別に好きだっていう意味なんでしょう?」
「ん? まあ・・・、そうだ。そのとおり」
「それならいいの」
「いずれにしたっていつかは誰かと結婚するんだぞ。お前だってそうだ」
「そうだね」
「分かったら部屋に戻ってオナラでもかまして頭を冷やせ」