ポルノグラフィティより『まほろば○△』-1
君は僕の位置関係では、友達の恋人に当たる存在だった。つまり他人。
いつも鼻の下を伸ばしながら、俺の友人が君を称賛する程度を耳にしていただけで、正直、僕の中ではどうでもいい奴の一人だった。
初めて会った時は、意外に可愛いな、程度で。例えばコンビニでバイトしてる子が可愛いな、って感じる程度の話だ。
面識はそれなり有ったけど。まぁ大抵、君達カップルと僕と三人で呑みに行く程度の付き合いで。
話し口調はおっとりで、常に聞き役の君に、アイツが馬鹿みたいに相づちを打たせてた事ぐらいしか印象に無い。
なのに
今、僕は君とホテルの一室にいる。
誘ったのは僕だったか、君だったか、酔ってた勢いか…定かでは無い。
だけど、動揺とか罪悪感とか衝動的感情なんてカケラすらない。
正直、いつかは…こうなるべきだ。そう思ってたから、今日がその日なんだ…って言う諦め?いや、覚悟が出来ていた。
キスを繰り返して、シャボンの匂いに包まれた髪を頬に感じる。
部屋に入った辺りから気付いていたが、僕の知っている君と、ここに居る君は掛け離れている。
シャワーを浴びていた時や、こうして自分で身体を開いた時、僕を試す様に笑っていた。唇が両端に吊上がって見えた。
あ、僕は君に犯されるのだろうか…なんて、思わずにはいられないくらい、狩る者の表情をしていた。
君の まほろば は濡れて崩れた柘榴の様だ。その紅いうねりに顔を寄せると、君は悦びの声をあげた。
ピンヒールの様に尖ってしまった、君の敏感な性感帯。ここに刺激を加える為に、口付けをすれば君のタガが外れてしまうだろう。
これが始まりの合図。
大都会の真ん中から、今日と明日の狭間を出航する。
君と僕のタブーと言う航海の始まり。
戻れない、いや…これを恋と呼べば新しい道が開けるのだろうか。
新しい船出が、新し進路が決まるかも知れない。
今夜だけの恋じゃなくなる、かも、知れない…
だから
ほら、心も身体も裸になって。今の君と、このタブーの海を泳ごう。
いつもと正反対の妖しい君の奥深くに、僕は君と分かり合う為に身体を突き進める。
君の声にならない甘い声が僕の鼓膜をくすぐる。
こんなにおしゃべりな君の声。
僕は少しだけ、優越感を感じてしまったみたいだ。
広いベッドが在るにもかかわらず、君は床で僕を受け入れている。
もう何度目だろうか。
知っている限りの体位を試し、何度も入れ替わっては汗だくになってしまった。シーツは波打って、上掛けは明後日の方向にずり落ちている。
「あっ、やっ…もぉだめぇぇっ」
君は最大限の声で達した事を告げながら、身体をのけ反らして喉を震わせた。
「…君となら、どこまでも淫らに落ちれそう」
僕の身体に跨がって、先程達したにも関わらず貪欲に僕を求める。
所詮、彼氏の友達の名前を呼んで、心までは果てる事が出来ないんだろう。
渇いた心はささくれ立って、身体だけでも満足しようと抗っている様に感じる。