4-1
「ふぅーっ」
放課後の保健室。
机で書き物をしながら、窓越しに校庭の陸上部の練習を見ている。
玲於奈さんは、振った腕から光る汗を振り飛ばして、トラックを疾走している。
私はといえば、保健室に入り浸ってウジウジしているスカトロの変態娘だ。
「いつも部活を見ているようだけど、誰か好きな人でもいるのかな?」
鎌田先生が訊いてくる。
鎌田先生は保健の先生で、悩める少女たちの良き理解者だ。
私は先生のお手伝いをしている。
「…そうです。
私とはハヤブサとフンコロガシくらいに差があって、
こうして片思いで見ているだけなんです。
ハヤブサさんのウンコでも落ちてこないかなって、見上げているだけなんです」
「よくわからないけど、そんなに恋い焦がれているなら、チャンスが来たら必ずモノにしないとね。
ちょっとしたきっかけで、事態はコロッと変わるものよ」
「そうですかぁ?」
「臆していたら一生後悔するよ。その時が来たら、自分の気持ちに正直にね」
「はい」
「さて、私は職員会議に出てくるから、好きなだけお気に入りの人を見ているといいわ」
鎌田先生は白衣をなびかせて出て行ってしまった。