みどり-1
「どうしたんだよ。何泣いてんだよ」
「・・・」
「何だよ、どうしたんだ」
「・・・」
「悪い夢でも見たのか? それとも俺が何か悪いことした?」
「・・・」
「あーっ、これは何だよ。お前これ、おしっこじゃないのか」
「ウェーン、ご免なさい」
「ご免なさいってお前・・・。あっ、馬鹿、そんな濡れたパンツなんか早く脱げ。馬鹿、此処で脱ぐんじゃない。風呂場に行って脱いで来い。早く洗って来い」
「ご免なさい」
「あーあ、こりゃあ堪らんな。洗えば何とかなるかな」
「陽ちゃんご免ね」
「お前何やってんだよ。体を洗えって言ったんだ。パンツなんていつだっていいんだよ」
「ああ、そうか」
「ベッドパッドもビショビショだけど洗えば何とかなるだろ」
「私が洗うから」
「当たり前だろ。お前がおしっこして何で俺が洗わなきゃなんないんだよ」
「ご免なさい」
「もういいよ。いつまで泣いてんだよ。子供だな、全く」
「私のこと嫌いになったでしょ」
「別に」
「本当?」
「お前何か体の調子悪かったの?」
「ううん、別に」
「それじゃ何でおねしょなんてしたんだよ。まさかわざとした訳じゃないよな」
「わざとって?」
「トイレ行くのが面倒臭いとか、人におしっこかけるのが趣味だとか」
「厭だ、そんな趣味なんて無い」
「それじゃやっぱりおねしょなのか」
「うん」
「もう寝る訳には行かないな」
「え? やっぱり?」
「お前こんなことしてまだ寝られると思う?」
「私は今でも陽ちゃんのこと大好き。愛してる。陽ちゃん、お願いだから捨てないで」
「何寝ぼけてんだよ。何がお願いだから捨てないでだよ。もう眼が醒めちゃって寝らんないだろって言ってんだ」
「あ? 陽ちゃん私のこと嫌いになったんじゃないの?」
「何で? 寝小便したからか? だってわざとじゃないんだろ」
「うん。病気なの」
「何処か悪いのか?」
「だから夜尿症なの」
「馬鹿。そんなの病気じゃない。お前がいつまでも子供だからだ」
「え?」
「あのパンツ見ろ。いい年して木綿のパンツなんか穿くなよ。お前今日俺とこういうことになりそうだって分かってたんだろ。分かってたらナイロンのパンツくらい穿いて来いよ。持ってないのか?」
「ナイロンのパンツ?」
「ああ」
「持ってないことない」
「持ってないことない? お前パンツっていくつくらい持ってんの?」
「さあー、20枚くらいかな。良く分かんない、数えたことないから」
「そいで、その内ナイロンの奴はいくつある」
「2つ」
「2つ? あーあ、そんな餓鬼みたいなことだから寝小便なんかするんだ。デッカイおっぱいしてんだからナイロンの小っちゃいパンツくらい穿けよ」
「おっぱいとパンツと関係あんの?」
「おっぱいとパンツの大きさは反比例するって決まってんだ。おっぱいがデカくなったらパンツは小さいのにすんの。そんなことも知らないのかよ」
「知らなかった」
「そんなこったから寝小便なんかするんだ」