みどり-13
「陽ちゃん、私会社のみんなに変わったって言われた。みんな凄く驚いてた」
「そうだろ。綺麗になったって言われたろ」
「うん、そうも言われたけど、どうしたの? 人が変わったみたいって言われた」
「派手になったからか?」
「うーん、ミニスカートにはみんな驚いたよ。私があんなミニ穿いて会社に行ったのは初めてだから。だけどそんなことより明るくなって別人になったみたいだって」
「そうか。それはいい。お前以前は暗かったからな」
「うん。だって私くらい不幸な人間はいないと思ってたから。それなのに、陽ちゃんと知り合ったら私くらい幸せな人間はいないって思えるようになっちゃった」
「俺と知り合ってそんなに幸せか」
「だって夜尿症で悩んでたのが嘘みたいに消えちゃったんだもん」
「馬鹿だな、お前は。夜尿症なんて男は誰も気にしたりしないんだ」
「そんなこと無いよ」
「まあ、男の夜尿症なんて厭だけどな」
「本当に良かった、陽ちゃんと知り合えて」
「今日仕事の帰りにな、お前のオムツを買って来てやったぞ」
「紙オムツ?」
「あ、違う。オムツカバー」
「オムツカバー? どんなの?」
「うん。お前この店で生理用のパッド買ってこい。1番デカイ奴」
「それをオムツの代わりにするの?」
「ああ、多分それで大丈夫だろう」
「カバーってどんな奴?」
「これだ」
「これ?」
「ああ、今日から生理用のパッドしてこれを穿いて寝るんだ」
「これゴムのパンツ?」
「ああ」
「これってオムツカバーなの?」
「違う。ゴムのパンツ」
「もともとはどんな時に使う物なの?」
「そういうのが好きな奴がいるの」
「こういうのって?」
「だからゴムの服」
「ゴムの服が好きな人?」
「ああ、俺も好きだけど」
「何でゴムの服が好きなの?」
「何でって、セクシーだろ。ぴったりくっついて透けて見えるんだから」
「こんなのがあるのなんて知らなかった」
「タイツだってあるぞ。ブラジャーだって何だってあるんだ」
「へーぇ」
「お前はこれからいつもそれを穿け。それで夜はパッドを入れればいいんだ」
「でも、こんなの穿いててミニスカートから見えたら変に思われちゃう」
「彼の好みなんだって言えばいい」
「あそうか」
「そうだ。恥ずかしいことは何でも俺のせいにしていいぞ。それが実際なんだから」
「そうか。陽ちゃんの好みでやってるって言えば多少は気が楽になるかな」
「そうさ。お前の会社の奴なんて俺は知らないんだから、会社の奴らに何と思われようと俺は関係無いんだ。だから私の彼は変態なんだって言っておけばいい」
「それも厭だな」
「彼の好みだから厭だけど渋々そうしてるって言っておけばいいんだ」
「それじゃもし見られたらそう言おう」
「ああ。みどりは厭らしい女にならないといけないぞ」
「どうして?」
「だって俺の恋人なんだろう」
「そうだけど、どうして?」
「変態の恋人ならお前も変態にならないといけないだろ」
「うーん、そうか」
「嬉しいだろ」
「複雑な気持ち」
「何で?」
「死ぬまで悩むと思っていた夜尿症を気にしなくて良くなったと思ったら、変態にならないといけないんだなと思って」
「そうさ。人生なんていいことばっかりっていう訳にはいかないんだ」
「でも変態の方がずっとましだと思う」
「それはそうさ。夜尿症なんて面白いこと1つも無いだろ。でも変態は人が何と言おうと面白いんだ」
「うん」
「分かったらうちに引っ越して来い。2人で別々の部屋に住んでるのは不経済だ」
「え? いいの?」
「いいさ」
「嬉しい」