文香-8
「勝手にしろ」
「私もう竜ちゃんの専用トイレになっちゃった」
「馬鹿。お前じゃあるまいし、俺はお前の体におしっこやうんこ引っかける訳じゃ無いんだ。トイレなんて言うな」
「うん」
「此処でちょっと又買い物しよう」
「此処で何買うの? 此処エアロビクスの店だよ」
「タイツやレオタード買うんだ」
「私が着るの?」
「俺がそんなの着てどうすんだよ。俺がこんなの着てエアロビクスしたら骸骨の踊りになっちまうだろ」
「エアロビクスすれば痩せるのかしら?」
「別にエアロビクスなんかしなくてもいいんだ。ただそういう服を着ればいいんだ」
「どうして?」
「うちにいる時はそういうのを着てろ」
「竜ちゃんのうち?」
「俺んちでもお前んちでも。外に出かける時はセクシーな服、家の中にいる時はこういう服」
「動きやすいから?」
「そう。それにセクシーだから」
「何でもセクシーが好きなんだね」
「そうさ。お前からセクシーを取り除いたら何が残る」
「私ってセクシー?」
「ああ、セクシーな服を着れば」
「こんなに沢山買うの?」
「ああ、この下着もいいな」
「へえー、こんなのあるんだ」
「多分レオタードの下に穿くんだろな」
「ストッキングみたいな生地だね」
「Tバックだし薄いから線が出ないんだろ」
「でも毛がはみ出そう」
「はみ出ない。毛は全部剃るから」
「え?」
「後で俺が剃ってやる」
「剃っちゃうの?」
「剃っちゃうの」
「毛が嫌いなの?」
「毛の無いのが好きなの」
「何で?」
「毛なんて無ければ毛虱もわかない」
「毛虱って何?」
「俺も見たこと無い。ところでお前、脇の下は意外に綺麗にしてるな」
「ああ、此処はどういう訳か毛が生えないの」
「それはいいことだ」
「ねえ、私のばっか買わないで何か竜ちゃんのも買おうよ」
「俺は今のままで十分セクシーだからいい。これ以上セクシーになって女が寄ってくるとうるさくてかなわない」
「指輪買って私のイニシャルを彫ったらそれをはめてくれる?」
「指輪なんか要らない」
「何が欲しい?」
「そうだな。お前のおっぱいが欲しい」
「え?」
「さ、早く帰っておっぱいでも吸おう」
「うん・・・」
「寒いか? この服」
「ううん、寒くはない」
「そうだな。脂肪がいっぱい付いてるからな」
「あーっ」
「何だ、何事だ?」
「ま、いいや」
「何が?」
「ううん、大したことじゃないから」
「何だよ? 一体」
「寒い?なんて聞くから思い出しちゃった」
「何が?」
「部屋のクーラー切ってくるの忘れた」
「何? それは大変だ」
「いいよ」
「でも今日は帰れないんだぞ。俺の部屋に泊まって行くんだ」
「うん、そのつもりで来たから」