文香-27
「それにお前だって、もうすぐ成人だろ。いつまでも父さんが養育費を払ってくれると思っていてはいけないぞ」
「そしたら母さんはどうなるの?」
「だから俺とお前で母さんの面倒見なければいけないんだ」
「そうかー」
「竜君、有難う。でも私のことなら心配いらないの。彼が払ってくれるのは文香の養育費ではないの。私が彼の愛人だから払ってくれるの」
「え?」
「まあ今でも籍は抜いてないから私が妻ということになっていて、愛人というのはおかしいのだけれど、実際には私は彼の愛人みたいな関係になっているの」
「そうですか」
「昔は彼を許せなかったけど、許せるようになってきたということね。でも前と同じ夫婦関係に戻って浮気されたりするような生活には戻りたくないの。愛人なら彼が浮気しても関係ないからどうでもいいと思えるの」
「そうですか」
「母さんも苦労したんだ」
「苦労してないと思ったの?」
「そうじゃないけど」
「それじゃまあ、一緒に俺のアパートに行って荷物をまとめて来るか」
「うん、そうしよう」
「という訳で、勝手に決めて悪いんですけど、今晩からここに住ませてもらいます」
「大歓迎よ。何かお祝いの御馳走を用意しておくわ」
「そんなこと何もいりませんよ」
「いいえ、新しい家族が出来るんだから、お祝いしないといけないわ。というよりも竜君みたいな子が文香と結婚することになって、私はこれ以上ないほど嬉しいの。だから私自身へのお祝いみたいなもんなのよ」
「そうですか。これからよろしくお願いいたします」
「よろしくお願いいたします」
「まあ、文香までそんなことを言うようになってくれて」
「母さん何泣いてんの?」
「ほら行くぞ」
「あ?」
「大人が泣くときは泣かせておいてやるのが親切なんだよ」
「そうか」
「これからは俺がお前を毎晩ひいひい泣かせてやるよ」
「セックスのこと?」
「そうだ」
「嬉しい」
「明日役所に行って籍を入れような」
「はい」
「こんな時だけいい返事するんだな」
「はい。これからいつもです」
「そうか、それはいいな」
「はい」
「一つだけ約束してくれ。これからはベッドでウンコしないでくれ」
「うん…………コ」
「???」