愛しき妹、千代子の危機-1
1.
妹の千代子が結婚をして、兄の良和は妹の学友、美希と結婚した。
結婚するまで、良和と千代子は兄妹ながらお互いに相思相愛関係にあった。
妹の結婚で、良和は妹の希望で美希と結婚し、美希を妹の身代わりと思って愛情を注いだ。道ならぬ恋に、何れは終止符を打たなければならない、兄妹はお互いの幸せを祈りつつ、別れを告げたのだった。
やがて美希は良和の胤を身篭った。
いくら愛し合っても、兄妹で愛の結晶を生むわけにはいかない。
美希を愛することで、良和は千代子との想いを断ち切ろうと決心していた.
千代子の夫の友成は、病院長の息子として父の経営する病院に医師として勤めている。
良和は妹の嫁ぎ先に遠慮をして連絡を避けていたが、しばらく音沙汰の無い千代子の消息が気に掛かって、思い切って電話を入れた。
電話に出たのは義母の静枝だった。
結婚式以来の長々とした挨拶が済んで、千代子に代わった。
静枝の思いがけない若々しい声に反して、千代子の声は弱々しく沈んでいる。
(何かある?)
「お兄ちゃん・・・」
涙声で、声が続かない。
「どうした、どうしたんだ?」
「お兄ちゃん、会いたい・・・」
電話では話し難いので、会って相談したいと千代子は声を潜めて呟いた。