愛しき妹、千代子の危機-13
13.
1週間たった。
「お義母さんが、おかしくなった」
千代子から電話が入った。
「どうしたんだ」
「うん、 お母さんの様子がおかしいのよ」
「それだけじゃ分からない」
「顔つきが柔らかくなって、言うことにも棘が無くなったの、それに暇さえあれば、タンゴを聴いて、ステップの練習をしている見たいなのよ、何か気味が悪いわ、お兄ちゃん、何をしたの?」
「別にどうってことは無いよ、趣味の世界は老若男女、初めて会っても10年来の友達のような気がするからなあ、余程タンゴが楽しかったんだろう」
「まあ、いい方向に向かったんだから嬉しいんだけれど、又、何かの拍子で前に戻ったりしないかしら」
「しばらく様子を見て、何かあったら知らせてくれよ、まあ、終わりよければ全て好しだ、元気を出せ」
一月がたった。
「お兄ちゃん、元気?」
また、千代子から電話が入った。
「どうしたい?何かあったか」
「ううん、お義母さんからお兄ちゃんに伝言。また、次のコンサートにも行きたいんだって、今度は自分が招待するから、チケットを買って下さいって、・・・」
「あいいよ、予定を連絡するよ、お義母さん、未だ変か?」
「有難いことに、変なままで落ち着いてるわ、変なことって言えば、友成さんが子供が欲しいって言い出して、コンドームは中止。それに冗談が本当になりそう、・・・」
「なんだい」
「ほら、あの時、お兄ちゃんの赤ちゃんが欲しいって言ったでしょう、・・・生理が遅れてるの、もしかしたら・・・・」
電話の向こうで、千代子の声が弾む。
(ごきげんよう)