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耀子
【SM 官能小説】

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耀子-7

 「例えば煮魚が大好きだという人と嫌いだという人がいて煮魚の話をしたとする。すると、そうですか、僕はちょっと煮魚が苦手でねと言ったりする訳だ。つまり自分は嫌いだけれども好きな人もいることは分かると言っているんだ。ところがSMとなるとそうはいかない。そんなのが好きなのは変態だ、人間じゃないとでも言いそうな顔をする。要するに事柄が人間性に少しでも関わりのあることになって来ると、自分とは異なるものを認めるのは本来なかなか難しいことなんだよ」
 「そうですか。そうかも知れませんね」
 「さて、それじゃお勘定」
 「あら?」
 「何があらなんだ」
 「先生は私を口説こうとはしないんですか?」
 「口説いて欲しいのか?」
 「口説いて欲しいから先生の小説を読んで感じたと言ったのに」
 「ほう」
 「ああいうの読んで感じたと言ったら私がどんなことをされたがっているのか分かるでしょう?」
 「それは分かる。別に僕の小説の感想など聞かなくても君のことは分かっていた」
 「え?」
 「僕はSMという言葉が好きじゃないけれども僕の書くものが一般にSMと言われていることは確かだ。そんな物ばかり書いているから、そういうものを好む女性か、そういう素質がある女性かは大体見れば分かる」
 「私はMの素質があるというんですか?」
 「あると思う」
 「そしたら何故口説かないんですか?」
 「年が違い過ぎるだろう」
 「SMプレイは年が違い過ぎると駄目なんですか?」
 「それを説明すると長くなる。一旦上げかけた腰をおろさないといけない」
 「おろして下さい」
 「そうすれば君の売上も増えるしな」
 「そんなことどうでもいいんです」
 「つまりSMプレイの話がしたい訳だな?」
 「はい」
 「それではそうしよう」
 「はい」
 「今SMプレイと言ったけれども僕はSMという言葉が本当は好きじゃないんだ。僕の書いた小説を読んで貰えば分かるが、僕の書く小説には他のポルノ作家のそれのように無理矢理SMに引き込んだり、嫌がる相手を力ずくで縛り上げたりというのは無い。嫌がる女を力ずくで好きなようにして責める。そうすると嫌がっていた女が何時の間にか感じ始めて悶えているというのがSM小説の一つのパターンなんだ。そういうことを夢見る男が多いということなんだろうな。しかし僕はそういうのは望まない。だから僕の小説には、貴方が好きだから貴方のやりたいことを私に何でもやって下さいという女しか登場しないんだ。君は『梨花』を読んだだけのようだが、あれもそうだろ? 嫌がるものを無理やりにしている場面なんて出てこない筈だ。でも『梨花』だけじゃない。僕のはどの作品も全部そうなんだよ」
 「ですから私は嫌がっていません」
 「まだ説明は終わっていない。僕の書く小説に出てくるいわゆるSMプレイのようなことは全部夫婦の間とか恋人同士で行っているんだ。つまり愛し合っている普通の男女が普通のセックスをするように僕の作中人物はSMをしている。だからそれはプレイではない。二人の愛し合い方が世に言うSM的なことをやっているというだけで、あくまでも僕の作中人物は彼らなりに彼らの好みの愛し方をしているだけなんだ。普通のセックスに飽きたから何か特殊なことをしているとか、偶には変わった事をしてみようというのではない。分かるかな」
 「分かります」
 「SM的性向の強い男が女を愛したとすれば縛ったりおもちゃにしたり浣腸したりするけれども、それはあくまでも愛していればこそなんだ。僕はそのつもりで書いている。だからプレイという言葉が僕は嫌いなんだ」
 「それだったら私は尚更先生に口説かれたい」
 「だから僕とそういう関係になるということは単なるセックス・フレンドとかSMプレイの相手になるということではないんだよ。僕の恋人になり、場合によってはと言うか、順調に進めば僕の妻になるという、そういうことを意味するんだ」
 「そうですか」
 「だから僕は君とは年が違い過ぎると言ったんだ」
 「18歳の女の子を恋人にしている56歳の男がいても不思議じゃないと思います」
 「君は僕の恋人になろうと言うのか?」
 「先生が良ければ」
 「うーむ」


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