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耀子
【SM 官能小説】

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耀子-3

 「あら。今時女だってポルノくらい読みますよ」
 「僕のは駄目」
 「どうしてですか?」
 「僕のは文学性なんて初めから爪の垢程も無い純粋ポルノだから男であっても買うのが恥ずかしいくらいのものだ」
 「それは是非とも読んでみたいですね」
 「君は一体いくつなんだ?」
 「年ですか? いくつに見えます?」
 「非常に若く見えるね」
 「いくつくらい?」
 「そういうのは分からないが」
 「だから当てずっぽうで」
 「20くらいかな」
 「当たり」
 「本当かい?」
 「ええ、公称20です」
 「公称とは?」
 「本当は18なんです。でもこんな所で未青年が働いてはいけないんでしょう? だから20と言って入りました」
 「うーむ」
 「どうしました?」
 「いや、余りにも若いんで驚いた」
 「若い女性は嫌いですか?」
 「そんなことはない。子供には興味が無いけれども体や雰囲気が一人前の大人なら若い方がいいに決まっている」
 「私は体も雰囲気も一人前ですか?」
 「そんなことは君自身が良く知っているだろう。そうでなければこんな店で働こうとは思わない筈だ」
 「そうでしたね。カマトト振ることは無かったですね」
 「さて、そろそろ勘定して貰おうか」
 「え? もうお帰りになるんですか?」
 「もう年だからそんなには飲めないんだ」
 「おいくつですか?」
 「56だ」
 「そんなのまだ若いじゃないですか」
 「いや、君のお爺さんであってもおかしくない程の年だ」
 「まさか」
 「又来るから今日はこれで帰らせて貰うよ」
 「はい。それじゃ名刺を下さい」
 「何で?」
 「電話したいから」
 「又飲みに来てくれという訳か」
 「それだけじゃありませんけど」
 「それ以外に僕のような爺さんと何の話があると言うんだね」
 「又爺さんだなんて言う。カマトト振るのも厭らしいけど、年寄り振るのも厭らしいですよ」
 「年寄りぶってる訳じゃないが、それじゃ名刺だ」
 「あら。何も肩書きがない」
 「そうだ。名前と住所と電話番号だけ」
 「どうして肩書きを入れないんですか?」
 「自分で資源の無駄遣い屋と肩書きを入れる程自虐的ではないからだよ」
 「作家と入れればいいんじゃないですか」
 「そうすると何を書いてますかと必ず聞かれる」
 「自分の仕事に誇りを持たないといけませんよ」
 「20の、じゃなかった、18の女の子に意見されるとは思わなかった」

 「電話したのに先生出てくれなかったですね」
 「それは済まなかった。外国に行っていたから」
 「何処?」
 「いや、あちこち」
 「戻ってから電話に受信記録があったでしょ?」
 「あったけれども僕は知らない番号からの電話にはいちいち返事をしないことにしているんだ」
 「私の電話番号を知らなかったんですか?」
 「知らないよ」
 「教えたじゃないですか」
 「あの後もう一軒飲みに行ったもんだから折角くれたメモを無くしてしまってね」
 「まあ。ちょっと電話を貸して下さい」
 「いいけど何で?」
 「私の番号を登録しておきます」
 「人の電話なのにそんなこと出来るの?」
 「え? そんなことをしてはいけないという意味ですか?」
 「いや、出来るのならいいんだ。僕の代りにやってくれるなら助かる」
 「ですからやっておきます」
 「大したもんだね。僕は自分の電話でさえなかなか使い方をマスター出来ないのに」
 「ああ、こんなの大体やり方は決まっているんですよ」


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