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耀子
【SM 官能小説】

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耀子-23

 「なるほど。それは手に取るように分かるな」
 「だから私、初めから知っててそういうファッションしてるのかと思った。今までみたいに堂々としていなさい、そういう風に恥ずかしがるととても厭らしく見えるよって言ったんです。でも知ってしまうとそうはいかないみたいで駄目でしたね」
 「うん。恥ずかしいという気持ちがないと厭らしさなんて生まれないんだ。ファッション・モデルとかキャンペン・ガールとかがどんなにセクシーな服を着ても厭らしいという感じはしないだろう? あれは仕事だからと割り切っているからで、だからこそ下着が透けても何処が見えても恥ずかしくないし、恥ずかしがらないから見ている方も面白いと感じない」
 「そうなんですね」
 「ああ。恥ずかしさというのは汁粉に入れる塩みたいなもんだな。隠し味なんだよ。それが無いと甘い汁粉が甘くならない」
 「なるほどねえ」
 「という訳だから胸を半分出して恥ずかしいと思うのは正常であり、大変喜ばしいことだ」
 「恥ずかしいことはないとさっきは言った癖に」
 「恥ずかしいばかりではないと言ったんだ」
 「そんなこと言わなかった」
 「そうか? さっきは言葉が足りなかっただけだ」
 「先生と言葉の言い合いをしてもかなわない」
 「僕は言葉が商売道具だからな」

 「これはどうですか?」
 「それは又随分薄いな。それに小さい」
 「伸びるから大丈夫です」
 「伸びるから穿けば余計薄くなるな」
 「そういうのは厭ですか?」
 「いや、好きだな。だけど薄いから折角ピッタリした服なのに下着の線が出ないなと思って」
 「だからいいんじゃないですか」
 「そんなもんかな」
 「下着の線が出た方がいいんですか?」
 「いや。出ない方が洒落ていることくらい知っている。だけど透けて見えないんだからせめて線くらい出ないと寂しいかと思って」
 「呆れた。変なところに寂しさを感じるんですね」
 「まあいい。それを買って穿いて来なさい」
 「はい」
 「パンストは?」
 「パンストにも好みはありますか?」
 「勿論あるさ」
 「どんな物?」
 「そういう服だからそれに合わせてキラキラ光るような物がいいな」
 「なるほど。それじゃこれはどうかしら」
 「うん。良さそうだな」
 「それじゃちょっと待ってて下さいね」
 「ああ」

 「まるっきり夜の服装ですね、これは」
 「夜の服を昼着てはいけないという法律はない」
 「それはそうですけど」
 「そもそも昼の服と夜の服とが違うものだという考えはおかしいよ」
 「そんなことないでしょう。TPOっていう言葉があるじゃないですか」
 「そうだな。だけど夜着る服と言うと例えば夜会服というのがある。古い言葉だから知らないか?」
 「知ってます。カクテル・ドレスのことでしょう?」
 「そうだ。だけどね、本当の金持ちは夜にパーティーなんかやらないと思うよ」
 「本当の金持ちは昼間パーティーをするんですか?」
 「いや。本当の金持ちは夜昼関係無しに時間制限なしに何日でも疲れるか飽きるまでパーティーをやるもんだと思う」
 「そうかも知れませんね」
 「だから夜会服なんていうのは小金持ちの発想だ」
 「でも暗い所で着る服と明るい所で着る服が違っているというのは自然なことだと思いますよ」
 「暗い所で着る服は蛍光塗料が塗ってあったり豆電球がぶら下がっていたりという訳か」
 「まさか」
 「でも確かに蛍光色の服はいいな。それにあれは昼間着てもつまらない」
 「先生は何でも派手な物が好きなんですね」
 「僕自身が地味だからだろうな」
 「先生ももっと派手な服を着ればいいんですよ。そしたら年寄り振ったりしなくなる」


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