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Mirror〜塔と鏡〜
【二次創作 その他小説】

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Mirror〜塔と鏡〜-1

高い塔を見上げている。
僕が積み上げた塔だ。
不細工でぎこちない形をしている。
年月が造り上げてしまった虚像。
扉を開けて中に入る。
壁に掛けられた鏡を見た。
醜い男が写し出された。
老けた自分が呻く。
笑う。
鏡に写し出されたリアルを笑う。

気付かない。
幼い自分が
『そっちじゃないよ。』
って叫んでいても
理由もなく
汚れた都会に溶け込んでいく。
人混み振りかえれば
ひきつった顔の群れが
強がりながら行き交う。
弱さを隠して行き交う。
群衆の中に僕を見つめた。
俯いて肩を落して流れる。群衆の中に繋がりを探す。繋がりを求めて交わることは弱さを包み隠すこと。
僕もそんな弱い人間だった。
締め付けられる。
無邪気なあの頃の面影は消え失せ
今は打算が無邪気を奪い取り
見返りが無償を剥ぎ取った。
夢中に意味なく生きていた自分が愛しい。
いつしか社会に無理矢理はめ込まれて
自分の歌声を忘れてしまい
大人になることで今まで大事に抱いていたものを
サラサラと零してしまった。
雫はもう還らない。
物欲に塗れていらないものと欲しいものの区別もつかない。
幼さを取り戻すことは
積み上げたバランスの悪い塔の礎を抉りだす事。
恐れる。
わけの解らないものを積み上げすぎたから。
あの群れに自分を見つける。
鎖で縛られたまま
いずれ崩れる塔にしがみついて。
此処に居心地すら感じてしまう。
習慣に埋もれた本能。
肩を震わせて
寒さに耐える。

今すぐ飛び出したい。
あの頃のように。 解き放たれたい。
あの雲のように。


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