愛のレイプ・セラピー-2
2.
テレビの健康番組が花盛りで、男の更年期が話題になっていた。
健二も人事ではない。
(もしかして、亜矢子は更年期じゃないのか?)
思いついて、メールを送った。
番組で知った治療法にホルモン治療があった。
「更年期障害じゃないのか?ホルモン治療を試してみたら?」
自殺事件の起きたのがその直後だったので、健二はいささか気に掛かった。男みたいな女と思っていたが、神経を病んでいる女性には不適切な言葉だったかもしれない。
亜矢子は退院をして自宅に戻ったが、相変わらず人に会うことは避けているという。
自分の不注意が亜矢子を傷つけたかと思うと、健二は気が気ではない。
朝食は、近くのカフェで過ごすと聞いていたので、出かけてみた。
ケヤキの木陰にセットされてテーブルに、亜矢子は独り座っていた。
「おはよう」
健二は、意識して明るい声をかけてみた。
「あら・・・健二さん、来てくれたの?」
「どう?調子は?」
「まあ、ぽちぽち・・・」
見上げる顔が笑みを浮かべていたので、健二はひとまずほっとした。
「びっくりしたよう」
「ごめんなさい、自殺しようとした訳じゃないのよ」
「僕のメールが原因じゃないかと思って、心配していたんだ。すまなかった」
「気にかけてくれて嬉しいわ、二回も離婚して、始めたITの仕事も上手くいかないし、確かに落ち込んでいたけど、私は自殺するタイプの人間じゃないのよ」
「まあ、僕もそうは思っていたんだけど・・・」
「正直言うと、健二さんのメールを読んで眠られなくて、睡眠薬を飲んだんだけれど、ちょっと量が多くて、朝起きられなくて・・・まあそんな訳で騒ぎになっちゃったのよ」
「じゃ、やっぱり俺のせいじゃないか」
「そう言えなくも無いわね、健二さんに、もうお前は女じゃないよみたいに思われたって、ショックだったの」
「俺はデリカシーに欠けるんだなあ」
二人でカプチーノを飲んだ。
「又会いたいけれど会ってくれるかい」
「貴男は歓迎よ、ボランタリーに戻るにはもう少し時間がいると思うけれど、健二さんは特別な人だから又来ください」