君と僕との狂騒曲-38
「でもなんで僕とマキ、なんて話が出てくるのかな。もしそうだとしたら、まるっきり「ホモ」だって事になる。同性愛者だったら、女の子のメニューには入らないんじゃないか?ただの変態だもの」
「わかっていないはねえ。今は同性愛って、すごくかっこいい事なのよ。なんでだと思う?それは女にとって叶わぬ夢になってしまうから。手に入らないものだから。女っていうのはね、手に入らない物に執着するのよ」
僕は理解した。簡潔にして明快。彼女の洞察と論理は実際の年齢より少なくとも10年は進んでいた。
「ギブアップ。その通りだ。でも、女には理解できないぐらい僕たちは進んでる。快楽にレヴェルがあるならかなり高い。」
大渡は大きな目をさらに大きく見開いて僕を見つめた。
「やっちゃってるんだ、本当に。信じられなーい」
「で、君のアバンチュールも聞きたいものだけど。このままじゃ不公平だ」
「私なんか、面白くも何ともないわよ。初体験は小学校の五年だし、やれるんならいつでもどこでも誰とでもセックスしたわよ。妊娠したことはないけれど、このままじゃ時間の問題。いいわねえ、男なら妊娠しないもの」
僕は溜息をついた。がっくりする。
「でも、僕たちの問題は、けっこう危険性があるものだよ。世間の風は冷たいからね」
僕らは笑った。笑い転げた。
「もしあなたが私を欲しくなったらいつでも言ってね。そういう変わり種とセックスしなかったなんて、後悔するもの。それに君もマコもいい男っていうより美少年だからね。美少年っていうのも私のメニューにはないし」
「うーん。君とセックスするってのは魅力的な申し出だなあ。でもまあ、しばらくはないな。僕にはとても素敵な恋人がいるからね」
「わかった。でも気が向いたらいつでも言ってね」
大渡と分かれ、家に帰る道を辿りながら、僕は女の子も悪くないかなって思った。
出来れば自分が女の子になれた場合に限られるけど。
彼女は遠い昔に狂い咲いた「腐女子」だった。