君と僕との狂騒曲-37
初めての時は、射精するとなんだか「すっ」と理性に戻ったのだけど、君との関係は時間が経つにつれ、射精したあとも柔らかい時間が流れるようになっていた。君の肩への軽いキスとか、君のキューティクルな髪の毛を梳いてみたり、君が一番感じる耳へ隠微な言葉を囁いたり、そういったこと全てが愛を確信する行為になっていた。
なんて大人な僕ら。二人の愛はもう円熟していた。それを確信するのは木陰のキスだったり、スカウトハウスで君の精液を呑むことだったり、時にはキャンプでのフルコースだったり、エトセトラ・エトセトラ。幸福の天使は僕に味方していた。
*
ちょうどその頃、なにかの理由でひとりでスカウトハウスに行ったことがある。珍しく、ガールスカウトの「大渡」がいた。最初は「こんにちは」って感じだったけれど、次第にうち解けていった。なにしろ小学校から同じ中学校。しかも同じスカウトだから共通の話題には事欠かない。
あらためて見ると、手足が素晴らしく長く、日野一中のなかでもとびきりの美人だ。そして大渡は突然僕に告げた。
「ケンピとマキ、これでしょ?」
指で作るラブ・サイン。すごい笑顔。光が満ちあふれていた。なるほど、これがマドンナの魅力か。僕はあきれた。大渡と僕は小学生からずっと一緒だった女の子だ。目利きは素早い。そして、意外に口が堅い。自分のやっていることが早熟だから、そっちのほうでも口が堅くなければやっていけないのだろう。
「だったら、何?面白い?まあ面白がるのは君の勝手だろうけど」
「違う違う違うってばあ」大渡は激しく首を振った。
「あんたたち、イケてるじゃない?いったいどれだけの女の子があんた達に痺れているかを知らないでしょ。なのに女子に手を出さないし、浮ついた話題も全くなし。でも、それじゃ君たちの弁護にはならないのよ。」
「僕たちはイケてるなんて冗談にもなりゃしない。まあ、標準より少しはマシだとは思っているけど」僕は肩をすくめて言った。
大渡はケラケラ笑った。笑っても変わらない凄い美人。大輪の薔薇かも。
「あんた達は同級生、下級生の夢なのよ。彼氏にしたいナンバーワンとツー。どうしてだと思う?それはね、ミステリアスだから。確かにかっこいい、イケてるのは他にも沢山いるけれど、あなた達は特別。外見だけじゃなくて、頭も切れるもん」
まさかそんな、と思ってはみたが、思い当たることは二つや三つじゃない。
「うーん、そうかも知れない。」
僕は考え込んだ。机の中に入っていたラブレター。体育で校庭に出たときの校舎から見つめるたくさんの女の子。廊下で出会って立ち止まる他のクラスの女子が浮かべる驚愕の表情。なかには「あなたと私は紅い糸で結ばれています」なんて手紙がCIA並の手順で送られてきたし、扱いにほとほと困ったことは二度や三度ではない。特に交換日記なんて、蜂蜜を頭から被ったみたいな提案を、ことごとく断ると、ほとんど間違いなくトマホークが飛んできた。