君と僕との狂騒曲-35
新しいことにチャレンジするのは誰だって厳しくて辛い。でもその壁を超えたときに未来はやって来る。というか、ポジティブでいたいから。もう暗闇に怯えるのは嫌だったから。君と幸福な時間を作りたかったから。
最初はもちろん上手くいかなかった。僕らは何回も繰り返し試し、やがて滑るようにして君が入ってきた。痛いというより、すごく苦しい感じ。僕はおもわずうめき声をあげた。
「やっぱりやめよう、こんな事」
「駄目…だ…しばらく動かない…で」
ギュッと掴むみたいに君を感じた。だんだんと馴染んで来る感じ。君のかたちや熱を感じる。そしてゆっくりと訪れる幸福感。何も使ってはいないのに、僕からはぬるぬるする液が溢れた。苦しさは強くなったり、弱くなったりして、まるで波のうねりのようだ。
少しずつ、本当に少しずつ僕は新しい海へ漕ぎ出していった。ゆっくりと力を入れてみる。凄く大きな物が僕に入っているのが解る。それは物凄く熱かった。君を身体の奥まで飲み込んだことを実感する。
そしてゆっくりと動き出した時、君はあっという間に僕に精液を放った。覚えた。凄いじゃん俺って。
心臓が爆発し、脳が加熱する。僕自身からも白濁した精液が溢れ出る。ぐにゃりとした風景が回転する。僕は鼻から血潮を流してぶっ倒れた。
*
秋は瞬く間に過ぎて、空が鈍色に澱んでいる。枯れ葉とドングリが風に割れている。僕のバスケットシューズが枯れ葉の中に沈み込んでいた。
僕らには未来があるだろうか。多分ないだろう。いくら僕が夢見がちでもそのくらいの事はわかる。でも、命の半分を占める君の重さを、どうやって補えばいいんだろう。またあの牢獄のような場所へ帰るのだろうか。そして聖痕でも増やしてゆくのだろうか。
僕は早足になってゆく。枯れ葉を蹴散らしながら、僕は、僕は、歩いてゆく。人はどうやって過去を捨てるのだろうか。それとも失えないものなのか。何千冊もの書物もそうそう名言を吐いてはくれない。アンブロワーズ・ビアスの「悪魔の辞典」みたいに、爽快ではあるが、不毛なだけの世界を生きるのだろうか。
僕はもう走っていた。テニスコートの手前で立ち止まった。息が切れていた。
喘ぎながら座り込み、澱んだ空を仰ぎ見た。
そこには何もない。