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樹理
【その他 官能小説】

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樹理-22

 「ご免ね。起こしちゃったね」
 「いいよ。ロープ出せ」
 「あら、憶えてるんだ」
 「それがあるから来たんじゃないか」
 「しょうがない」
 「何だこれ?」
 「ロープじゃないの」
 「あーあ、来て損した」
 「どうして? それじゃ駄目なの?」
 「こんなゴツくてぶっといロープで人間なんか縛れるかよ。考えれば分かるだろ」
 「駄目だった?」
 「これは船を港に繋いでおいたりするようなロープだろ。こんなんで縛ったら痛くてしょうがないぞ」
 「痛く無いように縛ったら?」
 「そんなこと出来るか。いかんなあ」
 「だって縛られたことなんて無いから分からないもの」
 「しょうがない。僕が買ってくるよ、今度」
 「ご免ね」
 「まあいい」
 「それじゃ縛られたつもりになって動かないでいるから」
 「馬鹿。そんなことしたって面白くも何ともない。このロープ何処で買ったんだ?」
 「東急ハンズ」
 「なるほど。あのね、SM用のロープをそんな所で売ってる筈が無いだろ」
 「何処で買えばいいの?」
 「大人のおもちゃ屋だよ」
 「厭だ。そんな所に買いに行くなんて」
 「だから僕が買ってくる」
 「いい、私が買って来る」
 「どうして? 大人のおもちゃ屋に行くの厭なんだろ?」
 「厭だけど私が行って買ってくる」
 「何で?」
 「私が縛られるんだから」
 「そうだけど大人のおもちゃ屋に行けばロープなんか1種類しか無いよ。まあ、色はいくつかあるかも知れないけど」
 「だから色を選ぶから」
 「ほう。色に拘りがあるのか」
 「そうじゃないけど貴方が行くといろいろ余計な物まで買ってくるでしょう?」
 「なるほど、それでか」
 「あのね、久美ちゃんから連絡があった。お母さんが危篤だって電話があったんでそのまま田舎まで行ったんだって」
 「田舎って何処?」
 「宮崎なんですって」
 「ほう」
 「それで携帯をトイレに落としちゃって私の番号も何も全部分から無くなっちゃったと言っていた。104で調べてお店に電話したんだって。帰ってきたら又働くらしい。良かった」
 「ああ良かったな。死んではいなかった訳だ」
 「まさか。貴方と何か関係があることで連絡を絶ったのかと思ってたからそうでなくて良かったと言ってるの」
 「それは酷い誤解だな」
 「恋に落ちると嫉妬深くなっちゃうのよ。自分でも信じられないくらい」
 「この顔とこのおっぱい持ってたら他の女に嫉妬する必要は無いだろ」
 「そう言ってくれると嬉しいけど、安心はしないわよ」
 「まあ、焼き餅も程々ならいいもんだけど」
 「折角起こしたのに駄目だったのね。ご免ね。普通のセックスで良かったらやる?」
 「まあ普通のセックスでもやるか」
 「私は普通のセックスが1番好きだけど」
 「僕は縛ってやるセックスが1番好きなんだ」
 「パンストで縛る?」
 「そんなの駄目だ。女を縛るっていうのは美的センスと直結してるんだ。荒縄でなきゃ駄目だっていう人もいるし、ゴムのチューブでないと感じないと言う人もいる。ロープだって赤でなきゃいかんとかやっぱりロープは白がいいとか、いろいろうるさいんだ。何でも縛ればいいってもんじゃない」
 「へえ、どうしてなのかしら」
 「だから服装と同じだよ。ミニが好きだとか、和服がいいとか、セーラー服が1番感じるとか、言うだろ」


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